一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)のイノベーション委員会は12月1日、次期SIP「戦略的イノベーション創造プログラム」に対する意見書を公表した。SIPは、内閣府に設置されている総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現させるために創設した国家プロジェクト。日本の経済再生と持続的経済成長を実現するには、科学技術イノベーションが不可欠なことから、「総合科学技術・イノベーション会議」が社会的に不可欠で、日本の経済・産業競争力にとって重要な課題について、プログラムディレクター(PD)および予算をトップダウンで決定し、府省連携による分野横断的な取組を産学官連携で推進するなどの特徴がある。5年ごとのプロジェクトサイクルで、平成26年度から30年度までが第1期、現在、平成30年度から令和4年度の第2期が進められている。次期SIPは令和5年度から開始される。

経団連の意見書では「次期SIPついては産業界からの期待も高く、研究開発への参画について関心を持つ企業も多い」としながらも、実際にリソースを提供するにあたっては具体的にクリアすべき課題があり、また、研究成果の社会実装を進めるにあたっては、研究開発の進展のみならず、先端技術の利活用の観点から規制緩和などの制度整備が併せて必要となることにも留意すべきとして、課題設定や社会実装のレベル、予算・人材の手当て、民間からの人的支援など計11項目にわたり意見をまとめている。

具体的には、①課題の設定については、「課題が抽象的で、具体的に取り組むべき研究内容が明確になっていないものもあるため、Feasibility Study(FS)の結果について、適宜の開示を求める」こと、②社会実装のレベルについては、「GRL(Governance Readiness Level)、SRL(Social Readiness Level)を上げることが不可欠」なこと、③予算や人材の手当てについては「新たに開発される技術や知見について、協力する企業における期間内での商業利用に向けた積極的な促進のための枠組みを構築すべき」こと、④民間からの人的支援については「必要とされる専門性、知見等がどのようなものかを明確にすべき」ことなどを求めている。

次期SIPでは現在、①豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築、②統合型ヘルスケアシステムの構築、③包摂的コミュニティプラットフォームの構築、④ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築、⑤海洋安全保障プラットフォームの構築、⑥スマートエネルギーマネジメントシステムの構築、⑦サーキュラーエコノミーシステムの構築、⑧スマート防災ネットワークの構築、⑨スマートインフラマネジメントシステムの構築、⑩スマートモビリティプラットフォームの構築、⑪人協調型ロボティクスの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備、⑫バーチャルエコノミー拡大に向けた基盤技術・ルールの整備、⑬先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進、⑭AI・データの安全・安心な利活用のための基盤技術・ルールの整備、⑮マテリアルプロセスイノベーション基盤技術の整備——が課題候補に挙げられている。

2023年1月には課題を正式に決定し、パブリックコメントの募集などを行った上で、3月には各課題についての研究開発計画が策定される見通し。