BCPプロセスを標準化して属人化からの脱却を目指す(写真:写真AC)

個人の能力や意識のバラツキ、スキル継承の難しさがBCPの実効性に影を落とすなか、属人化からの脱却が危機管理事務局と経営陣の共通課題となっています。既存のBCP構造を変えるための参考として、前回はBCPポートフォリオについて説明しました。今回はその応用となるBCPプロセスの標準化、その先に展開されるBCP-DXをテーマに解説します。

1. BCPの課題

いわゆる対策本部事務局、危機管理事務局、経営陣に横たわるBCPの課題は、次のような項目があげられます。

I. BCPの「実効性」に関する課題
・事業影響度分析の未実施→被害と事業損失の関係性の理解不足
・BCP訓練の形骸化と経営陣の訓練不参加→課題抽出努力の欠如

II. BCPの「継承性」に関する課題
・事務局のスキルや司令塔的能力不足
・人事異動や退職によりスキル・能力が継承されない

III. 有事における経営陣のBCP行動に関する課題
・経営陣の「経営的危機意識」が欠如している
・有事に際しての経営陣の「判断指針」や「ガイドライン」がない
・BCP内部監査の形骸化と経営陣の監査結果軽視
・経営陣の正常性バイアス対策がない

これらの課題は、ある「共通の問題点」から派生していると考えられます。

特に経営陣の危機管理としてあげたBCPへの課題は、現実的に有事の会社経営として大問題であるにも関わらず、危機管理事務局は、経営陣の有事の経営能力を過大評価(?)し、経営陣も重要視することがないのが現実です。

2. 経営陣のBCPプロセスとBCPポートフォリオ

そもそも経営陣はBCPとして何をするか、そのプロセスの理解について危機管理事務局は何かアクションを起こしてきたのか、ここに焦点をあてると、経営陣が理解すべきBCPプロセスは次のように整理できると考えられます。

【平時】
・危機管理組織の活動チェック(危機管理委員会)
・BCP内部監査報告を受け、マネジメントレビュー
・BCP訓練参加と課題への気付き、改善指示
【有事初動フェーズ】
・発災直後:自助、人命救助、安否報告、所在報告
・初動:対策本部事務局サポート
・緊急経営会議参集と社内外の被災情報確認(リスクコミュニケーション)
【有事BCPフェーズ】
・経営としての事業継続計画方針案策定と事業継続プラン作成指示
・事業継続プランの選択決定と詳細計画指示
・組織変更、事業縮退、コンテキスト判断(中核事業のアウトソーシング是非)等

ここで、前回で述べた「BCPポートフォリオ」が威力を発揮するわけです。