■対策のポイント:情報開示の好事例

ここで前回同様、今年度(2022年)の金融庁「記述情報の開示の好事例集」より、「社会(人的資本・多様性等」の分野で好事例とされた企業の開示例と、投資家やアナリストから評価されたポイントを見ていきたいと思います。この分野では紹介されている企業数は19社に上り、各社が積極的な情報開示を行っています。しかしながら、ここですべてを紹介するだけのスペースがありませんので、標準的な開示項目以外の人材育成、セクセッションプラン、社内環境、社員エンゲージメントという、特に企業の独自性の開示を評価された内容を見ていきたいと思います。

この事例集には、投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントとして、いくつかの項目が挙げられていますが、注目すべきは以下の3つではないかと思います。

●KPIの目標設定にあたり、なぜその目標設定を行ったのかが、企業理念、文化及び戦略と紐づいて説明されることは有用

●独自指標を数値化する場合、定義を明確にし、定量的な値とともに開示することは有用

●背景にあるロジックや、前提、仮定の考え方を開示することは有用

財務諸表に代表される定量的な情報以外を「ナラティブ」(記述情報)と呼びますが、ナラティブの本来の意味は、「物語」「語り」になります。

人的資本の情報開示にあたっては、なぜその項目を開示しているのか?目標の基準が今後の企業成長とどう連動しているのか?といったようなストーリーの構築が重要なのだと思います。また、人的資本に関する情報は短期で成果が表れるものではないため、中長期のスパンで継続して比較分析することも必要になってくるでしょう。

今回の好事例集に挙げられた企業の例も、他社にとって大変参考になるものだと思います。

参考資料:金融庁「記述情報の開示の好事例集~2.「社会(人的資本・多様性等」の開示例~(2023 年1月31日)
https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20230131/04.pdf