2023/09/18
事例から学ぶ

1890年に高級化粧石けん「花王石鹸」を発売してから130年以上にもわたり、家庭で愛用される、洗剤を中心としたさまざまな製品を世に送り出してきた花王株式会社。1999年にリスクマネジメント体制を整備した同社は、2016年にリスクマネジメントの改革に乗り出した。現在は、ERM(全社的リスクマネジメント)を展開し、将来直面するだろう未知のリスクにも対応できる体制を整えている。
1999年から始まったリスクマネジメント
同社では、1999年からリスクマネジメント体制を構築し、事故や災害、パンデミック、品質トラブル、サイバー攻撃、情報漏洩などのリスクへの対応強化に取り組んできた。2000年には、リスク管理やリスクが顕在化した時の対応の指針となる「リスク及び危機管理に関する基本方針」を制定。人命尊重を最優先に、環境保護、操業維持、資産保持の順で対応することを明示した。
この基本方針では、取締役会や社長執行役員、コーポレートリスクオーナーなど各役職における責務を詳しく定めている。
花王の危機管理で中核的な役割を果たしているリスク・危機管理委員会は、社長が委員長を務める内部統制委員会の関連委員会として設置したものだ。年に4回開催し、リスクの管理体制と活動方針を決め、リスク対応の進捗を管理している。リスク・危機管理委員会の委員長はコーポレート戦略部門の担当役員が担う。委員は主要部門を担当する執行役員や部長が務め、事務局は危機管理・RC推進部が担当。同部は国内外の関係会社を含めた花王グループのリスクと危機の管理活動を推進し、各部門や関係会社の取り組みを支援し、主管が不明確なリスクや危機の対応を進める。リスク・危機管理委員会の下部組織には、リスク・危機管理推進会議が設置されている。毎月1回開催され、各部門、関係会社の部長らがリスクの管理状況を報告し、議論を交わしている。なお、花王では経営目標の達成や事業活動に悪影響を与える可能性を「リスク」、リスクが顕在化した状態 を「危機」と定義している。
危機管理・RC推進部のうち主に危機管理を担当するメンバーは12名。コーポレートリスクや海外リスク、安全防災、BCP、リスクインテリジェンスを分担し、各担当者が連携しながら役割を果たしている。
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