災害後に自治体との協議で開設する「協定福祉避難所」に助成(イメージ:写真AC)

日本財団は、ボートレースの売上を主な財源に活動している民間の助成財団である。私たちも災害時の支援活動でお世話になっている。今般、協定福祉避難所を充実させるための助成制度を新たに開始した。

制度設計の際に、多少、相談を受けたことから、その概要をお知らせしたい。対象となる協定福祉避難所はもちろんのこと、自治体にも知っていただき、積極的な活用を期待する。

協定福祉避難所が多い理由

この助成事業の対象となるのは「協定福祉避難所」である。現在、協定福祉避難所が指定福祉避難所の2倍近くある。

[表1]全国の避難所数(令和4年12月1日現在 総務省消防庁)

協定福祉避難所は、災害後に自治体との協議により福祉避難所を開設するものとして協定を締結している。しかし、そこには下記のような課題がある。

・警報段階で福祉避難所を開設できるかどうかは未定である

・災害後に、開設するかしないか未定である

・災害後に、いつ開設するか未定である

・どのような人を何人受け入れられるか未定である(高齢者施設に障がい者や乳幼児を受け入れるかどうかは決まっていない)

・多くの協定福祉避難所は公表されていない(公表すると「一般の住民が多数押し寄せることが懸念される」と懸念している)

これは、実は行政にとっても都合がよかった。警報避難のタイミングや発災後、すぐに福祉避難所を開設しないのだから、物資の準備をしなくてよい。また、受け入れ態勢の協議、マニュアル整備、訓練など手のかかることをしっかりと詰める必要がない。その結果、福祉避難所の指定まではいかずに、協定の段階でとどまっているものが多いと推測される。

実際、2020年度までは、福祉避難所をいつ開設するかは、国の「福祉避難所の確保、運営ガイドライン」でも明確ではなかった。

福祉避難所ガイドラインの改定

しかし、2018年の西日本豪雨災害、2019年の東日本台風災害などで高齢者の逃げ遅れが頻発したことから、要配慮者の避難先として福祉避難所の早期開設が課題となり、国は2021年5月に「福祉避難所の確保、運営ガイドライン」を改定した。その内容は、主に以下の3点になる。

●指定福祉避難所の指定及びその受入対象者の公示
・「高齢者」「障害者」「妊産婦・乳幼児」「在校生、卒業生及び事前に市が特定した者」など受入対象者を特定した公示の例を記載

→これは、受入れを想定していない被災者が避難してくる懸念に対応し、福祉避難所の指定促進を図るものだ。

●指定福祉避難所への直接の避難の促進
・地区防災計画や個別避難計画等の作成プロセス等を通じて、要配慮者の意向や地域の実情を踏まえつつ、事前に指定福祉避難所ごとに受入対象者の調整等を行う

→要配慮者が日頃から利用している施設へ直接の避難を促進することをねらいとしている

●避難所の感染症・熱中症、衛生環境対策
・感染症や熱中症対策について、保健・医療関係者の助言を得つつ、避難所の計画、検討を行う
・マスク、消毒液、体温計、(段ボール)ベッド、パーティション等の衛生環境対策として必要な物資の備蓄を図る


すなわち、市区町村に対し「指定福祉避難所を増やし、物資の備蓄を進め、要配慮者の直接避難を進めてください」ということだ。

また、そのために指定福祉避難所を含む指定避難所へは国等の助成制度が数多くある。その一覧は「指定避難所における防災機能設備等の強化の推進について(通知)」(令和5年7月12日)にも示されている。
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/230712_bousai_1.pdf

たとえば、「緊急防災・減災事業債 / 防災対策事業債 〔地方債〕」では、指定緊急避難場所及び指定避難所における避難者の生活環境の改善や感染症対策に係る施設として(トイレ、更衣室、授乳室、シャワー、空調、Wi-Fi、バリアフリー化、換気扇、洗面所、男女別の専用室、非接触対応設備、発熱者専用室、避難者のための避難収容室や備蓄倉庫の改造・改築等、固定式間仕切り、感染防止用備蓄倉庫等)などへ、適用除外はあるもののおおむね7割が助成される。ただし、自治体の一部負担が必要であり、それがネックとなる。