2023/12/21
防災・危機管理ニュース

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は12月21日、首都直下地震時の被災地域への物資供給などに関する共同研究の成果を発表した。コンビニエンスストア5社が参加する大規模災害対応共同研究会によって作成されたもので、災害発生時の物資供給などの課題と改善策を中間報告としてまとめている。
報告書では、発災直後から72時間、4日目から1週間、1週間以降の3段階で課題と解決策を整理した。まず、発災直後から72時間では、避難所と在宅避難者らへの物流確保について、道路啓開や輸送力(特に運転手)の確保が困難になるとしている。避難所に関わる事項としては、避難所の運営職員・資機材の確保が難しくなるほか、発電機や冷蔵・冷凍・空調設備が不足すると指摘。さらに、避難所に対する支援物資の調達・配分方法についても、コンビニ各社は普段、弁当などの日配品を店舗からの発注数に応じて製造するシステムで運営しており、被災時は発災後の状況などにより製造可能数が異なるため、支援可能物資数を提示することは難しいとした。また、災害時に優先的に道路を走ることができる緊急通行車両についても、配送業者と複雑な雇用関係のあるコンビニ各社ではほぼ活用されていないことを課題に挙げている。72時間以降から1週間では、国から都県に対するプッシュ型支援が始まる中、輸送力不足に対する調整が課題になるとした。また、被災地では、コンビニ従業員が通勤困難な状況となりシフトが組めなかったり、製造・配送能力の不足から店舗への十分な納品が行われず、結果として、在宅避難者に対する物資供給も不十分になるとした。1週間以降では、停電などライフラインの停止が長期化し、在宅避難者に対してコンビニ・スーパーなどの営業再開困難な地域における食料調達確保が困難などの課題が挙げられた。
こうした課題について、これまで研究会が検討・確認してきた解決に向けた方向性も提示。例えば道路啓開については、国道交通省がとりまとめた首都直下地震道路啓開計画第4版に掲載されている対策を紹介。物資輸送機能の確保については、警察署などの審査を経れば事前に緊急通行車両確認標章などの交付が可能になったことなどを紹介している。
共同研究会は、2021年12月から2024年12月までの3年間の開催される予定で、2024年には南海トラフ地震対策の共同研究を行う予定。研究の目標として「すべての被災者を支援する物流を実現する」ことを掲げている。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/25
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方