2013/08/06
防災・危機管理ニュース
②「行動計画」のポイント
改定される行動計画は、特措法に基づく初の行動計画となり、特措法で新たに盛り込まれた各種措置の運用等を記載しているが、従来の行動計画(2011年9月改定版)との比較で注目すべき点を次に示す。
1)新型インフルエンザ等に対する体制
●指定(地方)公共機関の役割等を新たに規定(新型インフルエンザ等対策を実施する、業務計画を策定する、電気・ガス等を安定的かつ適切に供給する等)
●緊急事態宣言の運用を新たに規定(国内発生早期に緊急事態宣言が出されるまでの手続き等を規定)
2)感染拡大防止
●不要不急の外出自粛等の要請等について規定
●施設の使用制限の要請等について規定
3)予防接種
●特定接種の対象となり得る業種等を新たに明示
●住民接種の接種順位の基本的考え方を規定(ⅰ.妊婦や基礎疾患を持った人、ⅱ.小児、ⅲ.成人・若年者、ⅳ.高齢者の4つのグループに分け、ウイルスの特性など状況に応じて優先順位を決める)
4)新感染症
●行動計画の対象を新感染症にも拡大未知の感染症である新感染症の中で、その感染力の強さから新型インフルエンザと同様に、社会的影響が大きなものが発生した場合は、新型インフルエンザと同じく、国家の危機管理として対応する必要があることから行動計画の対象となっている。
行動計画の対象疾患は表1の通りとなる。
③発生段階ごとの対策
企業が自社の感染症対策、あるいはBCP(事業継続計画)を策定するにあたっては、行動計画で定められた、国・地方公共団体、指定公共機関等の動きを踏まえておく必要がある。
特に、現行の行動計画(2011年9月改定版)にはなかった緊急事態宣言が発動した場合、各発生段階でどのような措置がとられるか理解しておくとよい(図2)。
(2)「事業者・職場における新型インフルエンザ等対策ガイドライン」(以下「事業者ガイドライン」のポイント)
発表されたガイドラインは、「サーベイランスに関するガイドライン」をはじめ、全部で10のガイドラインで構成されているが、ここでは企業の感染症対策、BCP策定に関係が深い事業者ガイドラインについて述べる。
①事業者ガイドラインの目的
新型インフルエンザ等の流行時、従業員等に感染者が発生し大多数の企業が影響を受けることが予測されるため、事業者ガイドラインは、企業が感染防止策と重要業務の継続を検討するにあたり必要な内容を示している。
②事業者ガイドラインのポイント
現行の事業者ガイドライン(2009年2月策定)との比較において、次の点を押さえておきたい。
1)被害想定は変わらない
国民の25%が、流行期間(約8週間)の中でピークを作りながら順次罹患する、また重度の致命率(2.0%)の場合の入院患者の上限は約200万人、死亡者数の上限は約64万人という被害想定は変わっていない。
ピーク時に従業員が発症して欠勤する場合は、多く見積もって5%程度としているが、従業員自身の罹患のほか、むしろ家族の世話や看護で出勤困難となる場合、あるいは罹患を恐れて出勤しない場合などを考慮し、ピーク時には従業員の最大40%程度が欠勤すると想定している。
2)企業の事業継続を強く求めている
特措法のもとでは、指定公共機関は業務計画を作成する責務があり、登録事業者も発生時の事業継続を確実にするためBCPを策定し、その一部を登録時に提出することが求められている。ガイドラインでは、一般の企業も新型インフルエンザ等発生時に、感染防止策を実施しながら事業を継続することを求められている。
3)感染防止策についても基本線は変わらない
飛沫感染、接触感染を防止するため、従業員に対して、次の点につき注意喚起することとしている。
●38度以上の発熱、全身倦怠感等の咳、症状があれば出社しないこと
●マスク着用・咳エチケット・手洗い・うがい等の基本的な感染対策等を行うこと
●外出する場合は公共交通機関のラッシュの時間帯を避けるなど、人混みに近づかないこと
●症状のある人(咳やくしゃみなど)には極力近づかないこと。接触した場合、手洗いなどを行うことㅡㅡ手で顔を触らないこと(接触感染を避けるため)
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