2018/09/06
葛西優香の23区防災ぶらり散歩
「マンションが多い港区では、住宅居室内の遮音性の向上や高層ビル群による音の反響により、室内では放送が聞き取りにくいという課題がありました。そこで遮音性の高い集合住宅の室内でも回り込んで届きやすい電波を利用して、区の災害情報を送信するラジオを導入しました。配布を始めると皆様の需要が高く、配布再開に向けて準備中です」(北野さん)。
他県でも発生している災害の情報が飛び交う中、災害時の情報をいかに入手するのか住民の方々の意識も高まっているようです。
在宅避難を主体的に続けるために、対策方法を発信!

今後も力を入れて推進されるのは、「港区マンション震災対策ハンドブック 在宅避難のすすめ」です。2018年3月に高層住宅における防災計画作成の手引書となるハンドブックを改定されました。
「区は各高層住宅の震災対策の取組状況を一目で把握できる防災カルテを作成し、区職員が管理者の方を直接訪問して助言を行うほか、居住者で結成された防災組織に対する防災資器材助成などにより、高層住宅における共助体制の強化を支援しています」(港区マンション震災対策ハンドブックより)。災害時のとっさの判断のヒントから予防対策、防災計画の作成例の提示、区内の防災対策の先進事例の紹介など盛りだくさんの内容となっています。以下のページからPDFがダウンロードできますので、マンション防災に携わる方はぜひ一度見てください。
■「港区マンション震災対策ハンドブック~在宅避難のすすめ~」を作成しました(港区)
災害時、在宅避難が原則である高層マンション居住者。充分な準備をして自宅で生活を続けるための対策が大切になります。
「マンションの共助体制を創っていただくのが一番だと思っています。そのために、防災アドバイザーという専門家を派遣して管理組合向けに講演をしていただいたりしています。このハンドブックを作る際にも各マンションを回らせていただき、住民の方々のご意見もお伺いしました。着手しやすいところからまず取り組んでいただきたいという思いを込めて作成しています。管理者だけでなく居住者の方にもお渡ししています」(星野さん)。
共助体制をつくることが大切だけど何から始めればいいのかがわからないという住民の方も多い中、このハンドブックでは、最低限在宅避難時に知っておいてほしい心得がまとめられていて、切り離せばそのままマンション内のエレベーターや掲示板に貼り出すことができる用紙も含まれています。
まずは、ハンドブックから切り離し、マンション内に貼り出して住民の方に読んでいただくことから始めれば、大きな一歩を踏み出せるかもしれません。
帰宅困難者対策も検討しつつ、引き続き区内の整備に取り組む!

区内の主要8駅において、駅周辺事業者や鉄道事業者等が主体となり帰宅困難者対策を推進する組織として、駅周辺滞留者対策推進協議会を設立されています。協議会では、災害時に駅において、地域の被害情報や一時滞在施設の情報提供などを実施し、駅周辺の混乱を防止します。
「立ち上げに関しては区で支援させていただきますが、区が主導する形ではなく、訓練内容などは各協議会で考えていただく形で運営しています」(星野さん)。
区内に暮らす人、働く人、学ぶ人、訪れる人が災害時、混乱状態にならないよう事前対策についてお話をお伺いしました。高層マンションや昼間人口、外国人居住者が多い区の特性に合わせて様々な対策を取られている港区。制度を受けて、次は、一人ひとりの主体的な姿勢がいざという時に力を発揮する行動につながると強く感じました。
次回は、実際に主体的に活動されているマンション居住者の方々の活動について執筆予定です。何から始めたらいいかわからない…と思っている地域の方々!是非、はじめの一歩のノウハウをご参考にしていただければと思っております。
(続く)
- keyword
- 港区
- マンション防災
- 地域防災ステーション
- ハザードマップ
- 多言語化
葛西優香の23区防災ぶらり散歩の他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方