労働者に対する懲戒処分
懲戒処分における実体と手続

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/08/28
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
パリ2024オリンピックが閉幕しました。アスリートの皆さんの活躍はいうまでもなく、斬新な趣向の開会式、セーヌ川の水質、アスリートの出場性別、SNS投稿など、非常にさまざまな事柄が話題にのぼったのが今回のオリンピックだったといえるのではないでしょうか。
日本でいえば、オリンピックの開幕直前、20歳未満のアスリートが飲酒・喫煙をしていたことが発覚し、競技団体における聴取の過程において、当該アスリートが出場を辞退するという出来事があり、賛否両論の大きな議論が起きました。
この件に関しては、正確で十分な情報がないため、法的な観点からその当否を判断することは困難ですが、類似のことが、企業・組織においては、労働者の非違行為等があった際の懲戒処分という形で問題になってきます。そこで、今回、労働者に対する懲戒処分についてご説明したいと思います。
労働者に対する懲戒処分に関して、労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と規定し、使用者による労働者に対する懲戒権の行使が濫用として無効になる場合があることを定めています。これを懲戒権濫用法理などといいます。
そもそも、使用者の懲戒権の行使については、就業規則など労働契約上の根拠が必要であるとの理解(契約説)が通説的見解であるとされます。この立場からは、同条の「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」とは、➊懲戒事由(いかなる場合に懲戒処分がなされるか)と懲戒種別(いかなる種類の懲戒処分があるか)が就業規則等において明定されていること、➋懲戒事由該当性(労働者の行為が懲戒事由に該当すること)が認められること、ということを意味しているとされます。
上記➊についていえば、懲戒事由としては、無断欠勤、業務命令違反、各種ハラスメント、経歴詐称等が典型的なものであり、懲戒種別としては、譴責、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇等が挙げられます。これらを就業規則等に明定することにより、使用者による懲戒権の行使につき、契約上に根拠を有するようにしておくということが必要なのです。
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