2024/08/31
防災・危機管理ニュース
【ソウル時事】韓国で人工知能(AI)を用いた精巧な偽画像・動画「ディープフェイク」による性犯罪が深刻化している。女性の顔写真をわいせつな画像や動画に合成し、通信アプリなどを通じて共有される被害が未成年者に拡大。政府や警察が対策に動きだした。
◇被疑者の7割が10代
警察庁によると、ディープフェイクによる性犯罪は2021年は156件だったが、今年は7月までに297件に上った。被疑者の約7割を10代が占め、加害者も被害者も未成年という場合が多い。
加害者側はグループで、顔見知りの女性などの顔写真を通信アプリ「テレグラム」で共有し、ディープフェイクを作成。被害者が在籍する学校ごとに分類してチャットルームを作り、画像や動画をメンバーの間で共有するケースが多い。
SNSには最近、被害を受けたとされる小中高校や大学の校名を記載したリストが上がっている。写真が使われるのを防ぐため、子どものSNSのプロフィル写真や投稿を削除する動きも広がっている。
◇厳罰化求める声
尹錫悦大統領は27日の閣議で、こうした被害に言及し、「明白な犯罪行為だ」と指摘。「デジタル性犯罪の根絶」を訴え、対策を関係部署に指示した。警察は28日、7カ月間の集中取り締まりに乗り出した。
被害が深刻化する中、厳罰化を求める声も上がる。20年の法改正で、流出させる目的でディープフェイクを作成した場合は5年以下の懲役または5000万ウォン(約540万円)以下の罰金に処されるよう罰則が強化されたが、実際は前科がないなどで執行猶予になる場合が多いと指摘される。また、被害者が成人の場合は流出の意図なく作成したり、視聴、所持しただけでは処罰の対象外。政府は30日、視聴や所持の場合も処罰対象とするよう法改正を進める方針を決めた。
画像や動画が流出して広まってしまえば、地道に削除するしかない。女性家族省傘下の韓国女性人権振興院に置かれた「デジタル性犯罪被害者支援センター」は既に、海外も含めた成人サイトを24時間監視するシステムを構築。流出が判明した場合にはサイト側に削除を要請している。
ただ、テレグラムは秘匿性が高い上、海外の通信サイトであるために対応を強制できないという事情がある。当局は、テレグラムなどのプラットフォーム運営側に協力を要請する方針だが、協力を得られるかどうかは不透明だ。
〔写真説明〕韓国の尹錫悦大統領=29日、ソウル(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方