2024/09/02
防災・危機管理ニュース
コールセンターに寄せられる理不尽な苦情の電話からオペレーターを守るため、人工知能(AI)を使った「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策ツールの開発が進み始めた。電話越しの客はエスカレートしがちで、オペレーターの離職率が高い一因だと指摘される。膨大な音声データを駆使して激高した客の声色を変えたり、クレーマーの怒りを静める練習台になったりすることで、離職防止につながるのではと期待されている。
ソフトバンクは東京大と共同で、客の怒鳴り声を「怖くない声」に変換する技術を開発した。数万件に上る音声データを学習させたAIが、声量や抑揚などで「怖い声」を識別し、威圧感を適度に抑えた声色に加工する。開発当初は怒りがオペレーターに伝わらない技術を目指したが、客の感情を知ることは苦情処理に欠かせない。強いストレスを感じさせない程度に口調を和らげることにした。
ソフトバンクは来年度中のサービス提供を目指す。暴言や長時間の拘束といった迷惑行為に警告メッセージも流せる仕組みで、開発担当者は「『心の盾』として活用してほしい」と話す。
ソフト開発会社インタラクティブソリューションズ(東京)が提供しているアプリは、「AIクレーマー」をなだめる練習ができる。「異物混入」など苦情の内容や客の性格を設定でき、うまく対応すると怒りが収まる。やりとりの結果を「提案力」などの項目ごとに5点満点で評価し、改善点も指摘する。コールセンターを運営する企業からの問い合わせが相次いでいるという。
富士通も、カスハラ客役のAIを相手に対処法を訓練するツールを開発中。犯罪心理学者が分析した攻撃的なクレーマーに共通する話し方のパターンをAIに学習させ、リアルな会話を再現。来年度の製品化を目指す。
コールセンターは近年、電話からチャットに切り替える動きが広がっているが、高齢者を中心に電話でやりとりしたいというニーズは根強い。「クレーム対応が大変だとのイメージが採用のハードルになっている」(コールセンター業界関係者)との声もあり、顧客を刺激せずにオペレーターを守れるAI技術は業界に欠かせない存在になるかもしれない。(了)
(ニュース提供:時事通信 2024/09/02-15:31)
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方