2024/12/29
防災・危機管理ニュース
発生から1年となる能登半島地震では、道路が寸断され孤立した地域などで給油所がガソリンや灯油などの供給を続けた。石油は用途が広く容器で持ち運べるため、災害時の「最後のとりで」と位置付けられる。ただ、昨今は需要の減少に伴い製油所や給油所の閉鎖が相次いでおり、大規模災害に備えた供給体制の確保が課題となっている。
元日の震災直後、被災地の給油所は自家発電設備を稼働。長蛇の列を作る被災者や消防などの緊急車両に給油を続けた。経済産業省によると、七尾、輪島、珠洲3市と志賀、穴水、能登3町で69カ所ある給油所の半数以上が1週間以内に復旧。7月末時点で62カ所が営業可能になったが、一部は現在も休業している。
全国の給油所は1994年度末のピーク時の6万カ所超から2023年度末には約2万7000カ所に減少。零細企業が多く、後継者難などの問題を抱える。一方、東日本大震災や熊本地震の教訓から、半数以上が自家発電設備を備えるなど災害対策を強化してきた。
能登地震では石油元売り各社も運送業者と連携し、灯油のドラム缶などを輸送。グループの出荷施設が被災したENEOSホールディングスや出光興産は、近隣拠点を活用し供給を維持した。
石油の供給拠点が減少する中、経産省は地域の燃料備蓄を促すため、24年度補正予算で給油所のタンクの更新や一定量の保管を補助する事業に121億円を計上した。事業者で組織する全国石油商業組合連合会の広報担当者は「災害対応で在庫は必要だが、経営への負担は大きい」と説明。熊本地震翌年の17年に始まった、各家庭に灯油を備える「プラス1缶運動」などを呼び掛けている。
〔写真説明〕給油をする災害応援の消防車=1月2日、石川県穴水町(全国石油商業組合連合会提供)
〔写真説明〕能登半島地震で傾いた給油所の計量機=1月2日、石川県珠洲市(全国石油商業組合連合会提供)
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方