2025/02/24
防災・危機管理ニュース
【ワシントン時事】トランプ米大統領が、巨大IT企業を対象にしたデジタル課税への対抗措置を検討すると表明したことで、こうした税制を採用する欧州各国やカナダとの関係がさらに悪化する恐れがある。違法コンテンツ対策などを求める欧州連合(EU)の巨大IT規制も問題視。制裁関税発動も辞さない構えを示しており、米欧対立の火種となりそうだ。
デジタル課税への対応は、今週予定されている米仏首脳会談や、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも議題になるとみられる。
トランプ氏は、EUによる自動車や農産物への関税や高い付加価値税について批判を繰り返し、圧力を強めている。欧州側は「不公正なことは何もない」(EUのシェフチョビッチ欧州委員)と主張しつつも、米国との対話を重ね、貿易摩擦を回避したい考えだ。
米国が問題視するのは、デジタルサービス税(DST)と呼ばれ、多国籍の巨大IT企業がオンライン広告などを通じて自国内で得た売り上げに課税する仕組み。利益ではなく、売り上げに税を課すため、負担が大きい。対象はグーグルの親会社アルファベットやメタ、アマゾン・ドット・コムなど米企業がほとんどだ。
米業界団体によると、2019年ごろから導入が増え、フランス、イタリア、英国など約30カ国が採用または検討している。カナダでは昨年発効した。米IT業界では「各国政府が増税の政治的負担なしに歳入を得られるため、都合の良い標的になっている」(同団体)と不満が大きい。
トランプ氏は、第1次政権でもDSTに対する制裁関税に向けた調査を指示。バイデン前政権も引き継いだが、経済協力開発機構(OECD)が進める国際的なデジタル課税ルール整備の動きを受け、制裁関税の発動を見送っていた。
ただ、米国では国際課税ルールへの反対が根強い。トランプ氏は1月の就任日に、OECDの国際課税ルールは米国に適用しないとする大統領令に署名した。国際協調の動きは瓦解(がかい)した格好で、先行きは見通せない状況だ。
〔写真説明〕トランプ米大統領=22日、メリーランド州(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- デジタル課税
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方