2025/03/03
防災・危機管理ニュース
人工知能(AI)開発を手掛ける中国の新興企業ディープシーク(深度求索)の最新生成AIモデルを導入する動きが、同国内で急速に広がっている。米国製に匹敵する性能とされ、AIを巡る米中の覇権争いが激化する中、中国としては先行する米国に一矢報いた格好だ。しかし、日本などの海外では中国政府への情報漏えいを警戒し、官民が規制に着手している。こうした動きを尻目に、中国政府は国威発揚につながる国産AIの利用を後押しし、熱狂の中で普及が進む。
◇企業200社以上採用
ディープシークのAIモデルは低い開発コストながら、米オープンAIやメタなどと同等の高性能を実現したとされ、地元・中国でブームとなった。最新モデル公開から1カ月余で200社以上の企業が採用を宣言し、関連株は急騰した。
電気自動車(EV)業界では、比亜迪(BYD)などが自動運転車の開発に活用する方針を表明。IT大手の騰訊(テンセント)は対話アプリ「微信(ウィーチャット)」に採用した。インターネット検索大手の百度(バイドゥ)は、AI分野ではディープシークと競合するが、同社製AIを検索エンジンに導入した。
◇行政機関も活用
行政機関でも業務効率向上を目的に活用が進む。地方政府はこれまで、AIによる顔認証で治安維持などを図ってきたが、低コストで高性能なディープシーク製を行政サービスに用いる動きが広がる。
IT都市として知られる深セン市。香港と隣接する福田区は、文書処理や役所窓口対応、企業誘致など240のサービスに試験導入した。関係者は「効率が飛躍的に向上した」と評価する。
江蘇省鎮江市もサービスの質の向上と効率化を目的に活用を始めた。市当局者は「ディープシークの1日の情報処理能力は、市役所職員の10年分に相当する」と指摘する。
◇雇用悪化に拍車か
中国では若年層の失業率が高止まりする中、ディープシークの浸透で雇用悪化に拍車が掛かる「AI失業」が深刻化する恐れが急浮上している。単純な業務を同社製AIに任せることで、人員削減に踏み出す企業も実際に出てきた。化粧品大手の上海上美化粧品は、一部作業を自動化したのに伴い、クレーム対応や新製品開発、法務の部門で従業員を50~95%圧縮する方針だ。
専門家からは「テクノロジーが人間を代替するペースを制御する必要がある」と、急速なAI利用の拡大を警戒する声も上がっている。
〔写真説明〕中国の新興企業ディープシーク(深度求索)のロゴマーク(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/05/20
-
永野芽郁と田中圭の報道から考える広告リスクタレントの不倫疑惑
「不倫報道で契約解除」は企業の広告・広報担当者にとって決して珍しい判断ではなくなりました。特に「B to C」企業は世間の空気に過敏にならざるを得ない構造があります。永野芽郁さんと田中圭さんという人気俳優による不倫報道が世間をにぎわせています。企業にとって本質的に問われるべきは、タレントの私生活そのものではなく「報道によって自社ブランドが受けるリスクをどう評価し、どう備えていたか」という事前準備と、報道後のブレない対応です。本稿では、広告タレント起用のリスクに対して、企業が準備しておくべきこと、そして“報道された時”にどう判断すべきかを整理します。
2025/05/20
-
-
-
「まさかうちが狙われるとは」経営者の本音に向き合う
「困った人を助け、困った人を生み出さず、世界中のデータトラブルを解決します」。そんな理念のもと、あらゆるデータトラブルに対応するソリューションカンパニー。産業界のデータセキュリティーの現状をどう見ているのか、どうレベルを高めようとしているのかを聞きました。
2025/05/13
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方