2025/03/05
定例セミナーダイジェスト
阪神・淡路大震災から30年 あのときを振りかえる
消火、救助活動の現実
危機管理塾 2月17日
兵庫県消防設備保守協会事務局次長兼点検推進指導員
元西宮市消防局北消防署長
長畑武司氏
「自分ならどうするか」を従業員の共通意識に
危機管理塾は2月17日、東京・千代田区の朝日ビル会議室で開催した。「阪神・淡路大震災から30年」をテーマに、兵庫県消防設備保守協会事務局次長兼点検推進指導員の長畑武司氏が当時を回想。西宮市消防局の小隊長として懸命に消火・救助活動にあたったときの状況を発表した。
長畑氏は発災時、突然の地鳴りと激しい揺れに「川の字で寝ていた妻と子どもにとっさに覆いかぶさった。身動きがとれなかった」と説明。「直下型地震では逃げる余裕はないと思ったほうがいい」と話した。揺れが収まった後、ブレーカーを落とし、モノが散乱した家を出ると「近隣でもう炎が上がっていた」という。
当日休暇をとっていた長畑氏は、何とか1台消防車をまわしてもらおうと119番したが通じず、たまたま通りかかった消防団車両の分団長らとともに消火活動を開始。しかし「水源となる川が深く、かつ水量が少なかったため、水の確保に難航した」。どうにか工夫して対応するも「すでに鎮火は困難な状況。燃えている家はあきらめ、延焼を防ぐことに注力せざるを得なかった。中には生き埋めの人もいたと思う」と振り返った。
その後、波打つ道路を乗り越え、ようやく出勤すると、間髪入れず倒壊家屋に生き埋めになった人の救助へ出動。それから1週間ほど活動にあたったが「道具はバールくらい。身体の上にのしかかった梁を、人力ではとても動かせない。助け出したとしてもすでにお亡くなりで『すみません』と言って次の現場に向かうことを繰り返すしかなかった」。また、電気が復旧すると各所で通電火災が発生したという。
長畑氏は参加者に対し「防災・BCP担当者のみなさんは、直下型地震があったとき、どう行動すべきかを考えていると思う。しかし、ほかの一般社員の方はどうだろうか」と問題提起。「自分ならどうするかを考えるだけでなく、それを従業員の共通意識にしないといけない。みなさんがインフルエンサーになってほしい」と呼びかけた。
●次回危機管理塾
3月19日16:00~17:30 朝日ビル5F貸会議室
復旧時間の短縮を目指す、ADEKAのBCM
お申し込みはこちら。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方