2025/03/07
防災・危機管理ニュース
【北京時事】中国の習近平政権は台湾統一に向け、武力行使に当たるかどうかの判断が難しい「グレーゾーン戦術」と疑われる動きを強めている。今年に入り台湾周辺で海底ケーブル切断が複数回発生しており、通信遮断もちらつかせて台湾に揺さぶりをかけていく構えだ。トランプ米政権の台湾政策を見極めつつ、台湾封鎖の準備を着々と進めている。
◇「祖国統一を推進」
「祖国統一の大業を揺るぎなく推進し、(台湾住民と)手を携えて民族復興の偉業を共に成し遂げる」。中国共産党序列2位の李強首相が5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開幕式でこう宣言すると、会場は拍手に包まれた。
こうした統一の呼び掛けに、台湾の頼清徳政権が応じる可能性はゼロだ。頼総統は昨年5月の就任演説で「中華民国(台湾)は主権独立国家」と主張し、統一攻勢に真っ向から対抗。習政権は「独立勢力への懲罰」として、台湾を取り囲み大規模な軍事演習を行った。
◇侵攻は難易度高く
中国軍が台湾侵攻を成功させるためには、ミサイルなどでの先制攻撃後に大量の兵員を送り込む必要があるとされる。「米軍主導の反撃を踏まえれば、現時点では台湾海峡の渡海作戦は難易度が高い」(西側外交筋)
中国軍が統一に向けた当面の圧力として力を入れるのが台湾の経済封鎖で、その演習を繰り返している。タンカーの接岸阻止で台湾の備蓄燃料を枯渇させることなどを想定しているとみられ、通信遮断の試みと疑われる動きも目立ってきた。
◇有事にネット遮断も
台湾当局は今年2月、南部海域で海底通信ケーブルが切断され、付近で貨物船を拿捕(だほ)したと発表。船員8人全員が中国人で、「工作船のグレーゾーン攻撃か」との見方も浮上するが、中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は「世界中でよくある事故で、台湾側は話を膨らませている」と批判する。1月にも、台湾の北部海域で似た事案が起きている。
貨物船などがいかりを下ろしたまま航行し、海底ケーブルを引っ掛けて切断に至る事故は確かにあるが、過失か故意かを判断するのは難しいと言われる。台湾の軍事評論家は「台湾と海外をつなぐ海底ケーブルが全て断ち切られれば、インターネットをはじめ、ほぼ全ての通信が遮断され大混乱に陥る」と警鐘を鳴らす。衛星通信で代替できる範囲は限られ、島国の日本も台湾と同じリスクを抱えていると指摘する。
〔写真説明〕台湾海巡署の船に包囲される貨物船「宏泰」(右)=2月25日(同署提供・時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方