2018/09/11
東京2020大会のリスク対策

エスカレーターと改札の停止も
帰りは午後1時ごろから混み始め、午後2~3時ごろにかなり混みあう。帰りの混雑で問題になるのはエスカレーター・階段とホームへの人の滞留。国際展示場駅には大崎駅寄り・新木場駅寄りの端にそれぞれエスカレーター1基と階段、中央部に大崎駅向き・新木場駅向きのエスカレーターが3基ずつ、さらに中央にエレベーターが1基ある。
岩成氏は「ホームのエスカレーター近くの部分に人が滞留しがちなので、ホーム上で人の分散をさせる。帰りのエスカレーターは大崎駅寄りが、相互乗り入れするJR埼京線の渋谷駅や新宿駅での乗り換えに便利なので特に混みあう」と説明。ホームで人が多すぎると判断した場合、まず大崎駅寄りのエスカレーターを止める。それでも混雑が収まらない場合は新木場駅寄りのエスカレーターを止める。これでもだめであれば改札を止める。そして電車が到着・乗車でホームの人が少なくなったら、また改札とエスカレーターを動かす。「コミケ参加者が20万人規模の日は7~8回は改札を止める。今年夏のコミケ最終日の8月12日は10回止めた」と岩成氏は振り返った。
上下移動以外の問題点としては帰りに、埼京線への直通列車に乗りたがり、大崎駅止まりの電車に乗りたがらない参加者がいることのほか、交通系ICカードの残高不足で改札で止められる参加者がいること。これらについてはコミケのホームページやカタログを通じて周知活動を実施。大崎駅で湘南新宿ラインへの乗り換えが便利なほか、交通系ICカードについては行きの乗車駅での余裕あるチャージを呼びかけており、一定の効果はあげているという。

さらに国際展示場駅は9月からホームドアを稼働させる。「ホームドアができることで、電車がホームに近づいても安全に乗客が移動できるので、誘導が楽になる」と岩成氏は期待を寄せる。
コミケではほかにも特に夏には熱中症などで体調不良となり、駅の涼しいところで休養させる必要もあるほか、1日1~2回は救急車を呼ぶという。それでも岩成氏は「コミケの参加者はマナーが良く、駅員とトラブルになることはほとんどない」と述べ、概ねうまく運行・営業はできていることを説明した。2019年はビッグサイトが使用制限されることから、ビッグサイト以外に青海の仮設展示場にも会場が広がる。このため国際展示場駅以外に東京テレポート駅でも対策を講じる方針。
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