2025/03/17
防災・危機管理ニュース
【ニューデリー時事】パキスタン南西部バルチスタン州で起きた列車乗っ取り事件は「前代未聞の攻撃」(シャリフ首相)として、同国に大きな衝撃を与えた。当局は過激派掃討に力を入れているものの、むしろテロは増加。背景には、2021年に隣国アフガニスタンから撤収した駐留米軍が現地に残した武器の流入があると言われる。
事件は11日に発生。バルチスタン州の分離独立を目指す過激派「バルチ解放軍(BLA)」が440人を乗せた列車を襲い、乗客を人質に取った。治安部隊が襲撃犯33人を殺害して制圧。BLAによる犠牲者は民間人を含めこれまでに31人に達した。
BLAは当局を標的にしたテロに加え、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の下で開発に当たる中国人技術者への襲撃も目立つ。
ラホール経営科学大のライス教授(政治学)は時事通信の取材に、BLAは主に同州の疎外された民族バルチ人で構成され、「不公平感と、州の資源が住民の利益にならない形で搾取されているとの考えに突き動かされている」と指摘した。
首都イスラマバードのシンクタンク「安全保障研究センター」(CRSS)によると、パキスタンで24年に起きたテロ関連死者は前年比66%増の2546人で、過去9年で最悪だった。イスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」などBLA以外の組織も活発化している。
今回使用された武器は明らかになっていないが、軍統合広報局のチョードリー中将は14日の記者会見で、特にバルチスタン州でテロが増えている理由に「米軍が残した兵器を過激派が入手できるようになった」ことを挙げた。銃器に加え高性能の暗視装置も含まれているという。アフガンを掌握したイスラム主義組織タリバンを通じ、国境を越え過激派に渡っているとみられている。
〔写真説明〕15日、パキスタン南西部バルチスタン州シビで、列車乗っ取り事件の現場を調べる治安部隊(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- パキスタン
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方