2025/03/17
2025サイバーセキュリティーの論点
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。

――ガートナーは、日本企業が押さえておくべきセキュリティーとプライバシーに関する重要論点を昨年に続いて公表しました。新たに加わった論点を教えてください。
2025年に新しく加わった論点は、サイバー・フィジカル・システム(CPS)のリスク対応になります。CPS は IT/OTの相互接続、モノのインターネット (IoT)、産業用 IoT、またはスマートX プログラムといった種類に関わらず、サイバー領域と物理領域が相互に接続されるため、セキュリティーの脅威と影響がこれまで以上に拡大します。
AIとも連動し、ロボティクス、自動運転なども含めた対応の必要性がグローバルで高まっています。日本のCPSの集積地としては静岡県裾野市でトヨタが進めている実験都市であるウーブンシティが挙げられます。欧州におけるNIS2やサイバーレジリエンス法への対応もあることから、日本の製造業から製品セキュリティーの問い合わせも増加しています。CPSのセキュリティーもさまざまあります。今後は一層の対策が必要と考えています。
――重要論点のなかで、特に優先順位が高いのはどれでしょうか?
企業によって異なりますので一概に言えませんが、成熟度のそこまで高くない組織は図2の左半分、つまり一般的なセキュリティー脅威への対応を基礎から進めるべきです。一方、成熟度の高い組織ほど、図2の右半分の論点に対する具体的な取り組みの重要性が高 まっていると考えるべきです。

提供:ガートナー
セキュリティーに閉じた議論のみではなく、クラウド、AI、CPS、法規制、地政学的リスクなどと組み合わせ、最適解を求める必要性が高まっていることがその背景にあります。
なお、広範囲に影響を及ぼすものとして一番に挙げられるのは、やはりAI 関連です。「ChatGPT」の登場を発端とした普及と進歩は目覚ましく、数年以内にAGI(汎用人工知能)、ASI(人口超知能)が登場すると言われます。人間のような汎用的な知能、あるいはそれをはるかに超えた知能を持つAI の登場によって、セキュリティー領域も大きな影響を受けるでしょう。
AI、特に生成 AI セキュリティーへの影響は、4つのポイントに整理できます。第1はセキュリティーのリスクマネジメント、現場における改善自動化やリソースの最適化、サイバー攻撃に対する防御での使用。第2はサイバー攻撃を仕掛ける側での利用。新たな攻撃方法やツールの開発に生成 AIを用いて攻撃力をレベルアップさせています。
第3は、各社が生成 AIアプリケーションの利用を急ぐあまり、セキュリティーやリスクの対応が後回しになっており、対応が急務となっていること。第4は生成 AIアプリケーションを構築運用(あるいは提供)する立場としてのセキュリティーやリスクの対応です。
- keyword
- デジタルリスク
- サイバーセキュリティ
- DX
- ランサムウェア
- ガートナー
- AIガバナンス
- AI TRiSM
- AI事業者ガイドライン
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方