消費者裁判手続特例法の概要
消費者の財産的被害等の集団的な回復
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2025/05/20
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
市民社会における私人間の関係を規律する法律である民法は、対等な当事者同士の自由な意思に基づく法律関係を前提として形成されています。しかしながら、実際の社会においては、当事者間には交渉力等の格差が見受けられるところであり、事業者と消費者との間も同様です。
このため、民法の特別法として消費者契約法が制定され、消費者の利益を不当に害することとなる条項を無効としたり、一定の場合に契約の取消しを可能としたりすることなどにより、消費者の保護が図られています。
また、消費者の財産的被害等を回復するための民事裁判手続の特例法として、消費者裁判手続特例法(正式名称:消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律。以下「特例法」)があります。
時折、特例法で定められている共通義務確認訴訟が消費者団体により提訴されたという報道がなされることがあり、見聞きされたことがある方もいらっしゃるかと思います。そこで今回、この特例法の概要について取り上げてご説明します。
特例法の目的は「消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害等(略)について、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差により消費者が自らその回復を図ることには困難を伴う場合があることに鑑み、その財産的被害等を集団的に回復するため、特定適格消費者団体が被害回復裁判手続を追行することができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」です(1条)。
消費者契約において消費者が財産的被害等を被った場合において、その被害回復(損害賠償請求等)を裁判手続により行うときには、原則として、消費者が原告となり、事業者を被告として、訴訟を提起するなどしなければなりません。
この場合において、我が国においては、弁護士を訴訟代理人としない本人訴訟が認められているとはいえ、やはり専門的な知見がないと訴訟を遂行し、勝訴することが困難なケースがままあるといえますので、可能であれば弁護士の訴訟代理人を立てたいというのが多くの方の思いであるといえます。
一方で、弁護士に委任をするとなると、弁護士費用の負担が求められることになり、とりわけ請求額が高くない場合など、仮に勝訴したとしてもコストとリターンとが釣り合わないようなケースも一定程度あり、このため裁判手続による請求を諦めてしまうことも見受けられるところです。
誤解を恐れずにいえば、こういった泣き寝入りを防ぐために、特例法では、消費者個人に代わり、特定適格消費者団体が被害回復に向けた裁判手続を遂行できるようにされています。
この特定適格消費者団体とは、被害回復裁判手続を遂行するのに必要な適格性を有する法人である適格消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受けた者になります(2条10号)。
おすすめ記事
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/01/05
年末年始にサイバー攻撃は約2倍以上増加する
サイバー攻撃のリスクは、平日よりも休日に高まる傾向がある。デジタルデータソリューション株式会社(東京都港区)の調査によると、年末年始にはサイバー攻撃が約2倍以上に増加することが明らかになっているという。
2026/01/04
能登半島地震からまもなく2年
能登半島地震からまもなく2年。災害対応の検証も終盤に入っています。浮上した課題を反映し、災害関連法も変わりました。来年はこれらの内容をふまえた防災・BCPの見直しが加速しそうです。発災直後から被災地を調査し、石川県の初動対応を振り返る検証委員会の委員も務めた金沢大学准教授の青木賢人氏に防災・BCP強化の方向を聞きました。
2025/12/25
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/23
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方