2025/05/31
防災・危機管理ニュース
【ソウル時事】韓国大統領選(6月3日投開票)を前に、人工知能(AI)により本物と酷似させた偽の動画や画像を作るディープフェイク技術を利用した選挙関連の投稿が激増している。中央選挙管理委員会によると、削除要請をしたのは30日までに9818件に上り、2024年の総選挙時の約400件を大幅に上回るペースだ。当局は監視を強めているが、削除を要請する時点で既に拡散されており、対応が追い付いていない。
囚人服を着た候補者が刑務所に収監された画像。女性アナウンサーに特定の候補者の落選を促すニュースを読ませた動画―。これらは、今回の大統領選に絡むディープフェイクとして29日、選管が捜査機関に告発した事例だ。
韓国では、23年に公職選挙法が改正され、投開票日の90日前からディープフェイク映像などを使った選挙運動が禁止されるようになった。対象は候補者の所属政党や陣営の関係者らに限定されず、違反した場合、7年以下の懲役または1000万~5000万ウォン(約100万~500万円)の罰金が科される。
ただ、同法の改正以降、選管が告発に至ったのは、先の事例が初めてだ。韓国のメディア環境に詳しい翰林大の崔英宰教授は、「(改正)法の趣旨は良いが、虚偽情報により選挙運動する意図があったという証拠を見つけることが困難で、処罰が難しい」と指摘。対象期間が短いため、「(投票日までに)選挙目的であることを明らかにするのに時間的な制約がある」と語った。
ディープフェイクで生成された映像や動画はユーチューブなどSNSを通じ拡散されている。崔教授は「(SNSで)流通するコンテンツには、陰謀論や、興味を引きつける偽ニュースも多い。新聞や放送には出せない扇情的で感情を刺激する内容により、利用者を没入させている」と分析した。
〔写真説明〕パソコンのキーボード(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方