【北京時事】トランプ米政権の発足から半年、中国は米国が繰り出した追加関税に同等の報復関税で徹底抗戦し、レアアース(希土類)の輸出規制も打ち出して米国に圧力をかけた。両国は5月に91%の関税を互いに撤回し、24%についても90日間効力を停止することで合意。中国の強気の姿勢が米国の譲歩を引き出したとの見方が広がっている。
 ◇深まる自信
 「断固とした立場を堅持することで、正当な権利と利益を守ることができる」。中国共産党機関紙の人民日報は7月上旬、こんな論評記事を掲載した。
 トランプ米政権の関税引き上げに対し、中国は当初、大豆など一部品目を対象とする報復関税で応戦していた。だが、米国が対中関税を一気に引き上げた4月以降は同率の関税で対抗。レアアース7種類の輸出を一時的に止め、米メーカーが生産停止に追い込まれるなど影響が広がった。
 両国は5月にスイスで閣僚級の貿易協議を行い、計115%の関税引き下げに合意。米国が半導体などの対中輸出規制を緩める一方、中国がレアアースの輸出を容認する「ディール(取引)」も結ばれたとされる。
 ただ、今月20日に公表された貿易統計の詳報によると、6月のレアアース磁石の輸出実績は前年同月比4割減と、3カ月連続で2桁減だった。「中国は依然としてレアアースの輸出を抑制する『カード』を捨てていない」(北京の外交筋)といった見方も漏れる。
 背景にあるのは高まった国力に対する自信の深まりだ。米国との経済規模の差は徐々に縮小し、科学技術でも米国を猛追。人工知能(AI)や電気自動車(EV)、次世代暗号技術「量子暗号」などは、既に世界トップクラスとされる。
 ◇下がる対米依存
 貿易面の対米依存度も下がった。第1次トランプ政権が始まった2017年から24年にかけて貿易総額に占める米国の比率は3ポイント低下。政府は貿易相手の多角化を訴え、東南アジアなどとの取引を増やした。
 米中は8月中旬に効力停止の期限を迎える24%の関税の取り扱いを巡り、協議を続けているもようだ。決裂した場合、米国が再び対中関税を引き上げるとの見方も市場でくすぶる。
 だが、ある北京の外交筋は、高関税のかけ合いにより「米国はほとんど何も得られなかった」と分析。現時点で関税が再び引き上げられる可能性は低いと予想した。 
〔写真説明〕中国の港に積み上がったコンテナ=5月23日、湖北省武漢市

(ニュース提供元:時事通信社)