各地の自治体で、職員が不当な要求や行為を受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)の対策が進んでいる。トラブルを防ぐため、通話の録音を始めたり、職員の名前や所属を掲載した職員録を廃止したりする動きが広がるほか、庁舎に警察官を常駐させているケースもある。
 新潟県佐渡市は4月から、総務課で通話の録音を試験的に始めた。電話をかけると、録音を知らせる自動音声が流れる。電話によるクレームへの対応が長時間に及ぶケースがあり、導入を決めた。サービス向上にもつなげたいという。大阪府貝塚市は6月、通話録音装置を本庁舎の電話交換機に設置。録音データは1年間保存する。
 福島県は今年度、一般の購入が可能だった職員録を廃止した。窓口担当の職員を「インターネットに氏名をさらす」と脅す行為があり、悪用される恐れがあると判断した。徳島県も今年度から職員録を廃止した。
 熊本県宇土市では4月から、カスハラ対策の一環として、県警の警察官1人が庁舎に常駐している。「熊本県警」と記されたジャケットを着用し庁内を巡回。市の担当者は「現役の警察官が身近にいることで、職員の安心感が向上した」と話す。
 大阪府寝屋川市は、職員の名札に本名とは別の「ビジネスネーム」を使用できるようにした。職員の個人情報の特定を防ぐ狙いで、現時点で1人が使用しているという。
 総務省が自治体職員を対象に2024年に実施した調査では、過去3年間にカスハラを受けた経験がある人は35.0%。厚生労働省が23年度に企業の従業員に行った調査での割合(10.8%)の約3倍で、窓口業務に携わる職員では6割がカスハラを経験していた。 

(ニュース提供元:時事通信社)