2011/05/25
誌面情報 vol25
放射線への安全対策
放射線の影響について、従業員の安全対策の視点からも関心が高まっている。企業はどこまでの対策を講じるべきか。丸の内総合法律事務所の中野明安弁護士に聞いた。
Q.企業はどこまで安全対策を実施すべきでしょうか?
放射性物質を直接扱うような危険業務に就くなら業種ごとの労働安全衛生法上の安全基準(電離放射線障害防止規則など)がありますので、それは当然クリアする必要ありますが、日常的な一般企業が、通勤あるいは日常業務の中で、どのような基準で、どのような根拠に基づいて備えればいいのかということは、現時点でこうすればいいという明確な回答を示すことはできません。ただし、何もしなくてい
いということではなく、従業員への安全配慮義務というものは問われているので、企業としては安全に関する適切な情報を入手するようお願いをしたいと思います。
Q.国の示した避難地域に入らないように指導していれば安全配慮義務を満たしているとは言えませんか?
言い分としては、あるでしょうが、国の示した基準を守っていれば企業が責められることはない、100%大丈夫だとは申し上げられません。薬害肝炎訴訟などがいい例です。国が安全上問題無いと言ったとしても、その他の情報により合理的な判断がなされた結果、危険ではないかということが世間的に認知されていたとすれば、国、そして国の情報を盲目的に受け入れ何らの対策も取らなかった企業の双
方に責任があると考えられます。
今回の場面でも、現にアメリカは日本よりはるかに広い80㎞以内は危険だと言っているわけで、さまざまな情報を集めた中で、企業が取った対策が不合理な意思決定に基づくものでなかったか、その決定過程が問われることになると思います。
Q.信頼できる情報が少ないのに対し、インターネット上では根拠がないと思われる情報も多く流れています。
もちろん、当該情報の具体的根拠や情報源が明らかではない情報に基づき企業が意思決定をしたとしたら、それは当該意思決定過程が不合理なものであったと判断されることにつながることになります。本当は、もっと国が信頼の置ける情報提供の方法を確立しておくべきですが、それが無い状況下では、専門家からの意見聴取など、取り得る多くの適切な情報を集めた上で判断してくださいとしか言えません。
Q.少しでもリスクがありそうな地域には、従業員を行かせないというのも手では?
確かに、まったくリスクが無い場所だけで業務を行うのなら100%安全と言えるかもしれません。しかし、一方で顧客の要望に応じなかった、売上の機会を逃した、ということは、企業としての事業継続の根幹(経営者にとっては善管注意義務)が問われることになります。だからこそ、経営者は従業員の安全を第一の方針としながら、事業継続のために適切に情報を入手し最大限に可能な業務を実施してゆ
く、という難しい経営判断を迫られるわけです。それが企業やプロの経営者の宿命なのだと思うのです。 (4月14 日、談)
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/02/17
-
-
-
-
-
今年の夏は大規模停電のリスク大?
今年の夏、東京電力管内を中心に電力不足が懸念されています。需要に対する供給力の余裕を示す「予備率」が1パーセントを切る見通しで、もしそこで突発的な発電所の事故や故障が起きれば予備率はさらに低下、マイナスに陥りかねません。大規模停電のリスクについて、東京電機大学名誉教授の加藤政一氏に聞きました。
2026/02/12
-
-
-
海外危機管理マニュアルの作成が急務
海外に社員を送り出す企業にとって、緊急事態が発生した際の対応体制は必須。どんなに現地に慣れたベテランでも、自分の身を守り切れない事態は起き得ます。ましてや現在は安全保障上の国家対立が深まり、東アジアの緊張も高まっている時代。海外危機管理サービスを手がける安全サポートの有坂錬成代表取締役に、海外進出企業が取り組むべき対策を聞きました。
2026/02/05









※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方