2015/04/14
防災・危機管理ニュース
NECが世界初のデータ解析技術を開発
NECは、世界で初めて土中水分量を解析することで、土砂斜面の崩壊の危険度をリアルタイム・高精度に算出できる新技術を開発した。
土砂斜面崩壊の危険度を算出するには、「土砂の重量」「水圧」「土砂の粘着力」「土砂の摩擦」など、降雨量により変化する土砂状態のデータを取得する必要がある。しかし、データをリアルタイムに得るには、専用のセンサを土中に設置する必要があり、コスト面などの課題があった。
今回開発した技術は、複数の指標データを「土砂に含まれる水分量」のみから算出可能にし、水分量を計測するだけで、リアルタイム・高精度に斜面の危険度が把握できる。従来に比べ、約1/3のセンサ数で斜面の「危険度」を算出できるため、従来と同じコストでより広範囲にセンサの設置が可能になる。土砂災害の危険性がある斜面を高精度に把握することで、住民の避難時間や安全を従来以上に確保し、迅速な避難勧告・指示が実現できる。
現在、土砂災害危険箇所に指定されるエリアは、日本全国で約52万箇所あり、全てに地質調査や対策工事を行うには多くのコストがかかる。
自治体が土砂災害の避難勧告・指示を発令する際の判断情報の一つに「土砂災害警戒情報」があるが、一部の自治体は、斜面に設置した監視カメラ・ワイヤセンサ・傾斜センサなどの情報も収集しながら避難すべき地域の特定、避難に伴う判断を行っている。この場合、前兆現象の把握から崩壊までわずかな時間となることもあり、土中に専用のセンサを複数埋め込むことで、早い段階から土砂斜面の危険度を算出する技術の開発が進んでいる。しかし、この算出には土砂崩壊の危険度の指標となる、土中の多様なデータを収集し解析する必要があった。
今回開発した技術は、水分計センサを用いて計測した、土中水分量データのみを用いて斜面の危険度をリアルタイム・高精度に把握可能にした。
本技術を用いた実証試験で斜面の「危険度」を算出した結果、土砂災害の危険性ありと判定した10分~40分後に実際に斜面崩壊が発生することを確認している。今後、自治体・大学・研究機関等と共同で本技術の実証実験を進め、2015年度中の実用化を目指す。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2023/01/31
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月31日配信アーカイブ】
【1月31日配信で取り上げた話題】家庭での防災行動を高めるために
2023/01/31
-
-
1000人に聞いた防災の取り組みと行政への期待
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
2023/01/30
-
社内滞在時をイメージさせる実践的な訓練と備蓄
テクニカルセラミックスを開発・生産するクアーズテックは2012年、東京都の帰宅困難者対策条例を機に一斉帰宅抑制対策に乗り出しました。独自のプログラムを追加した実効性の高い訓練や被災時の心理にも配慮したきめ細かな備蓄が評価され、2021年には東京都のモデル企業に。同社の取り組みを紹介します。
2023/01/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月24日配信アーカイブ】
【1月24日配信で取り上げた話題】最強寒波への備え
2023/01/24
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月17日配信アーカイブ】
【1月17日配信で取り上げた話題】防災心理を学ぶゼミ生が制作した企業の防災マニュアル/コロナ発生から3年 企業の初動対応を振り返る
2023/01/24
-
BCPと助け合える関係が機能した災害復旧活動
2019年の台風19号でグループ含め3工場が壊滅的被害を受けたカイシン工業は、経営トップが「全力復旧」の方針を発表すると各工場が即座に活動を開始。取引先や協力会社の支援を受けて設備の交換を迷いなく進めるとともに、代替生産によって早期に出荷を再開しました。同社のBCPと助け合える関係づくりを紹介します。
2023/01/19
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方