大阪市の繁華街・道頓堀の雑居ビルで消防隊員2人が死亡した火災で、延焼拡大の要因と推定される外壁広告について、建築基準法に適合しているか審査する確認検査を設置者が受けたか不明なまま市が設置を許可していたことが10日、分かった。3年前の許可更新時に、確認検査を不要とするミスがあったことも発覚した。
 確認検査は、建物や工作物を造る際、設計図や建築工程が建築基準法に適合しているか審査する制度。高さ4メートルを超える看板は工作物に該当するため、設置工事前に確認検査が必要となる。
 火災で燃えた看板は高さ8.62メートルで、土台となる金属製のフレームに広告の幕が張られていた。市は幕の設置者は把握しているが、フレーム設置者は特定できていないという。
 市は2012年5月に屋外広告物条例に基づく許可を出す際、幕を設置した食品会社に「この広告物は建築基準法に基づく工作物確認を受けていないので、改修時には必ず確認を受けること」などの条件を付けた。その後の更新時も条件は継続されてきたが、22年の更新時に突然「不要」とされた。
 市建設局の担当者は「12年の初申請時は確認検査を受けたか不明だったので条件を付けた」と説明。22年に不要としたのは「事務的な誤りだと思う」と明かした。
 一方、確認検査を所管する市計画調整局の担当者は、検査を受けるべきなのは幕ではなくフレームの設置者だと話す。食品会社は市の聞き取りに「フレームはもともとあった。設置者は分からない」と説明しており、フレーム設置者の特定は難航しているという。食品会社は取材に「一切お答えしていない」と回答した。
 火災は先月18日に発生。市消防局によると、雑居ビルの外壁広告を伝って上方に延焼し、亡くなった2人が見つかった隣接するビルにも延焼したと推定される。 
〔写真説明〕先月の火災で燃えた看板広告。食品会社の広告幕が焼けて、土台のフレームが残った=8月20日、大阪市中央区
〔写真説明〕火災で燃えた看板広告の設置許可申請書。許可条件に「改修時には必ず確認(検査)を受けること」などの条件が付けられた(画像を一部加工してあります)
〔写真説明〕2019年と22年の広告継続許可申請書。22年には確認検査が「不要」とされていた(画像を一部加工してあります)

(ニュース提供元:時事通信社)