森飛15導入、要件には利用時を想定した「配慮」も

森飛15は、住友林業株式会社とmazex社が共同開発した中型の運搬ドローンで、本来は林業用に苗木などを運搬する目的で開発されている。吊り下げ式の運搬ドローンの操縦で課題となる「共振」の防止装置のほか、高精度GPSを搭載したドローンの往復飛行や運搬物の切り離しの自動化、2オペレーション機構などの機能が「被災地における食事を運搬する」という同社のドローン活用の目的に合致したために選定された。

森飛15にはカメラは搭載されておらず、操縦者が完全目視で動かすのが基本だ。ドローンを操作する「プロポーションコントローラー」は2機あり、目視が難しい場合は補助者のプロポに切り替えて操作することもできるほか、RTK(Real Time Kinematic)による2点間飛行も可能だ。現場の運用では森飛15よってキッチンカーなどで調理した食事を一度に20食程度を運び、500~600メートルの距離であればバッテリー1本で3~4往復することを想定している。

■mazex「森飛morito15」
展開サイズ:1042×1042×571mm 
格納サイズ:645×645×571mm
モーター外径:96mm
プロペラ:34inch
バッテリーサイズ:245×166×60mm
バッテリー重量:4.58kg
機体総重量(RTKなし) :11.7kg(切離装置&共振防止装置含む)
最大離陸重量(RTKなし):31.28kg
最大搭載重量:15kg
最大ホバリング時間:30分
最大飛行距離:1000m(離陸地点より)

 

また、ドローンの選定は自社だけでなく自治体や自衛隊、消防といった非常時に連携する公的機関や住民の心象にも配慮した。実際に自治体の方々とお話をすると、ドローンを飛ばすと通報がきたり、不安を覚える住民の方がいるという意見もお聞きしました。国公立の病院などのお客様が多い私たちにとっては、特に現場でハレーションが起こるリスクはなるべく抑えたい。そう考えたのも国産の『森飛morito15』の導入の決め手の一つです」

操縦スキルの向上は外部専門家の協力が必須

ドローンを災害支援に活用する場合、電波法・航空法といった法規制や利用目的に適した操縦技術の習得のほか、発災時の関係各所への連携など備えるべきことは多岐にわたる。実際、同社においても吊り下げ式の物資搬送に際して求められる高度な技術のほか、食品衛生上の安全担保、食事の受け手側の状況に応じた活動対応などの講じるべき施策は少なくない。現状はBCPにおけるドローンの活用を一体的に支援する枠組みや制度は設けられていない。

2025年6月、このような環境下で運用体制構築を模索する西村氏は民間のドローン操縦技能認定証を取得。5日間かけて集中的に受講して日中の目視飛行、さらに目視外、夜間飛行の技能も取得した。また現在は毎月1回、実践を想定したトレーニングを行っている。特に重視しているのは、ドローンで最も多いトラブルである接触事故のリスクを下げる訓練だ。「目視で300メートル先のドローンを操縦するとなると、近くに電柱があっても障害物としての感覚が分かりにくいのは、まだ想像できます。ただ、着陸地点に傾斜があると倒れてローターが地面に接触して機体損傷に直結するほか、たった風速5mが操縦に与える影響や運搬用のフックの切り離し方など、自分たちが目指すドローン運用は、普段からドローンを運用している専門家の方々の観点で見ると全く思いつかないことが多々ありました。いずれは社内でドローンオペレーターを育成するのが現実的であるというものの、その場に応じた『最良の選択』で行動するためのトレーニングは、なかなか教えてもらえないかも知れません」。

ドローン運用のための操縦スキルを向上させるためには、富士産業における株式会社ヘリフライトのように、自社事業や運用目的に近しい領域の専門家によるトレーニングが必要と考える。特に中型機の吊り下げ式ドローンならではの風・振り子現象の影響や離着陸地点選定・減速手順・荷下ろし動作などのトレーニングを、運用目的から棚卸して訓練メニューを考案してくれる外部協力者を見つけて、関係を強化することもドローン運用において重要なポイントといえるだろう。