超巨大台風×内陸部直撃×72時間の命を守る判断
~事前に分かっているのに、なぜ被害が出るのか~

八重澤 晴信
医療機器製造メーカーで39年の実務経験を持つ危機管理のプロフェッショナル。光学機器の製造から品質管理、開発技術を経て内部統制危機管理まで経営と現場の「翻訳者」として活躍。防災士として国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンDRR分科会幹事も務める。
2025/09/21
あなたの会社の危機対応力を鍛える新しいアプローチ
八重澤 晴信
医療機器製造メーカーで39年の実務経験を持つ危機管理のプロフェッショナル。光学機器の製造から品質管理、開発技術を経て内部統制危機管理まで経営と現場の「翻訳者」として活躍。防災士として国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンDRR分科会幹事も務める。
数日前から進路が分かっているにもかかわらず、なぜか被害が繰り返される台風。今回は威力を増した「超巨大台風」を題材に、空振りを恐れず命を守る判断基準を考えます。もし1959年の伊勢湾台風級の超巨大台風が現代の海水温で勢力を保ったまま日本を直撃したら。数日前から分かっていても、多くの命と事業が危険にさらされることが懸念されます。
日本気象協会は2025年9月から10月の台風接近数が平年並みか多くなると予測。今年は日本近海で台風が発生しやすく、発生から接近までの期間が短くなる傾向にあるとしています。専門家は「台風活動が少ない年ほど海水温が高く維持され、急激にスーパー台風に発達するリスクがある」と警告しています。
【前提条件】 【シナリオ】 【タイムライン】 72時間前(金曜午前) 48時間前(土曜午前) 24時間前(日曜午前) 12時間前(日曜夜)
【追加で発生する課題】 ・ 出荷や顧客対応など重要業務を「誰を・どこまで」継続するか、停止基準が曖昧。 ・在宅勤務に切り替えても自宅の安全は保証されず、守り方の判断が難しい。 ・月曜の出社が必要な担当者をどう安全に確保するか、具体的な備えが欠けている。 |
質問1:72時間前(金曜午前)に判断すること
台風は「超大型・超強力」のまま日本列島を直撃する進路が確定しました。この時点で、業務を継続しつつ、従業員からは「早めに帰宅したい」という声も出始めています。
あなたの会社では、どの対応を取りますか?(当てはまるものを選び、その理由や判断基準を記入してださい)
1. 何もせず、通常通り業務を継続する
理由:_____________________________
判断基準:___________________________
2. 希望者の早退を認めつつ、重要業務は継続する
理由:_____________________________
判断基準:___________________________
3. 対策本部を設置し、この時点でリスク対応を本格化させる
理由:_____________________________
判断基準:___________________________
※ヒント:
・「空振りを恐れて判断を遅らせる」と、従業員の安全が脅かされるかもしれません。
・ 「今まで大丈夫だった」という経験則への過信は、超巨大台風では通用しない可能性があります
質問2:24時間前(日曜午前)に判断すること
台風は勢力をほとんど落とさず接近し、中心気圧は890hPa、最大瞬間風速は70m/sの予測。
列島縦断が確実で、内陸部でも総雨量500mm超、暴風域から長時間抜け出せない見込みです。あなたの会社には、出張やオフィス出社の可否を判断できる基準がありますか?
(金曜・土曜・日曜の休日を含めて点検してください。Yes/Noで答え、Noの場合は「いつまでに」「何を決めるか」を記入してください)
(1) 金曜日
通常業務を継続しながら、週末に備えて「誰を残し、誰を帰すか」を判断する基準があるか?
□Yes □No:________________________________________________
(2) 土曜日
休日出勤や出張予定者に対し、移動や勤務を禁止する明確な基準があるか?
□Yes □No:_________________________________________________
(3) 日曜日
翌日の出社可否を、社員に周知するための判断基準と伝達ルールがあるか?
□Yes □No:________________________________________________
質問3:月曜朝(台風上陸直前)に判断すること
鉄道は全面運休、高速道路は通行止め、暴風域はすでに広範囲を覆い、社員の通勤手段はほぼ途絶しています。しかし、重要業務を担当する社員の中には「何とかして出社したい」」「現場を守らなければ」という声も出ています。あなたの会社には、この最終局面で 出社・在宅勤務・社内待機をどう決めるか の基準がありますか?(Yes/Noで答え、Noの場合は「いつまでに」「何を決めるか」を記入してください)
(1) 出社禁止の基準
生命の危険がある状況で、明確に「出社禁止」を打ち出せるか?
※ただし社会インフラ維持に従事する社員には、特別な移動・宿泊の安全確保策を会社が準備できるか?
□Yes □No:_________________________________________________
(2) 在宅勤務の基準
在宅勤務を指示しても、停電・断水・避難指示で作業継続が困難な場合の代替基準があるか?
□Yes □No:_________________________________________________
(3) 社内待機の基準
すでに出社している社員や来訪者が帰宅できない場合に、社内待機へ切り替える明確な基準(安全な場所・備蓄・通信手段の確保)があるか?
□Yes □No:_________________________________________________
(4) 重要業務担当者の基準
事業継続に不可欠な担当者や、インフラ業務に従事する社員が「現場に残りたい/残らざるを得ない」と申し出た場合、「命を優先して退避」か「代替手段に切り替え」かを判断する基準 があるか?
□Yes □No:_________________________________________________
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