現場と経営をつなぐ法務の役割が最重要

右からレクシスネクシス・ジャパン社長のパスカル ロズィエ氏、プロアクト法律事務所代表パートナー弁護士・公認不正検査士の竹内朗氏、レクシスネクシス・ジャパンコンテンツソリューション責任者の漆崎貴之氏、同社営業責任者の渡辺貴氏

法務・コンプライアンス業務ソリューションのレクシスネクシス・ジャパン(本社:東京都中央区、パスカル ロズィエ社長)は、東京都内の本社で「2025年法務動向総括と2026年のコンプライアンス市場予測」をテーマにラウンドテーブル形式のディスカッションを行った。

うちトークセッションでは、同社コンテンツソリューション責任者の漆崎貴之氏とプロアクト法律事務所代表パートナー弁護士・公認不正検査士の竹内朗氏が対談。2025年の企業不祥事を振り返り問題点を整理・検証するとともに、2026年に企業法務が注視すべきリスク、担うべき役割などを議論した。

2025年の不祥事から読むコンプライアンスの課題

竹内氏は2025年の大きな不祥事を「会計不正」「金融」「情報セキュリティ」「競争法」「ビジネスと人権」「ガバナンス」の6テーマで整理。それぞれの要因を分析し、法務・コンプライアンスの領域に投げかけられた問題を解説した。

「会計不正」では新規株式公開前からの粉飾が発覚したAI企業オルツの例をあげ、数年前に同じく粉飾決算で上場廃止、破産した半導体装置製造エフオーアイとの酷似性を指摘。「エフオーアイ事件で監査法人や主管理証券会社は痛い思いをしたが、その再来といえる事件が起き、資本市場を守る立場として経験から何を学んだかが問われている」と話した。

証券取引所が特別注意銘柄に指定したモーター大手ニデックについては、会社の決算数字に監査法人の意見が出ない状態が続くのは稀有な事案と説明。「最終的な原因は第三者委員会の調査報告書で解明されるだろうが、上場企業として責任ある決算を出せない状態は、資本市場に対する責任として非常に重い」と述べた。

2025年の企業不祥事を総括する竹内氏

「金融」では、フィッシングによる証券口座乗っ取り、大手損保のカルテルに対する行政処分、生保の個人情報不正取得などをピックアップ。なかでも特に注視する事案として10億円近い使途不明金が反社会勢力に流れていた福島県のいわき信用組合の不正をあげた。

2度の第三者調査を行い、2度の行政処分を受けた事案。最初の調査で使途不明金が明るみに出たが役職員が非協力的で、経営陣を刷新しての再度の調査で反社に流れていたことが判明したという。「巨額の不正に加え調査妨害、金融庁当局がどう動くかが注目される。こうした不正の構造がほかの信組にもないのかが焦点」とした。

三菱UFJ銀行の貸金庫の窃盗も問題性が大きいとし、顧客の申告を受けてから不正の認知までに4年半かかったことを強調。「日本を代表するメガバンクでこれだけの規模の不正に4年半も気づかないことが問題。再発防止策もそこに力点が置かれている」と語った。

「情報セキュリティ」では、アサヒグループホールディングスとアスクルのランサムウェア被害を取り上げ、攻撃を100%防ぎ切れないことを前提としたダメージの最小化が課題と説明。また、今後サイバー攻撃が激化するなかで「犯罪者に身代金を支払う経営判断が合法か否かは議論になるところ」とした。

「競争法」に関しては、代表的な事案として三菱ふそうトラック・バスが下請企業に金型無償保管を強いた問題に言及。「サプライチェーンの強靱化や中小企業の賃上げが課題となっている状況下、昔からの商慣習がいまだ続いていることに当局は強い問題意識を持っている」と話した。

「ビジネスと人権」では、フジテレビと日本テレビの問題について「有力な番組出演者にハラスメント行為やコンプライアンス違反があったとき、企業としてどうスタッフを守るのかが問われた。その意味ではカスタマーハラスメントの類型。かつ、人的資本経営に直結する事案」と分析した。

最後の「ガバナンス」では、サントリーの新浪剛史会長が違法薬物の捜査に絡んで辞任した事案を紹介。会長の去就を決めるプロセスで取締役会が情報を集め、会議に諮ったうえで意思決定したことを取り上げ「ガバナンスが効いたのが一つのポイント」とした。