現場領域での法的スキル・リソースが不足

これを受けてレクシスネクシス・ジャパンの漆崎氏は「現場から経営層へのエスカレーションがうまく機能していない」「現場を監視するリソースを投入できていない」といった法務全般にかかる問題意識を披露。「第三者調査までいかずとも、細かな法律のキャッチアップができないために、意図せず行政処分になってしまう事案も多い」と話した。

企業法務が抱える問題を語る漆崎氏

同社は国内外の法制度・法改正を細部にわたってリアルタイムで網羅したデータベースを構築し、リーガル情報プラットフォームとして提供。それを法務・コンプライアンスの実務に取り入れて運用するソリューションの開発やコンサルティングングも行い、不正・不祥事を生まないガバナンス体制をサポートしている。

漆崎氏は最近の自社の傾向として、法務部門以外の部署からの相談が増えていると説明。「コンプライアンス実務が複雑化。独禁法や個人情報保護法などの主要な法律は法務部門がカバーするも、専門領域への対応と責任は個々の事業部門に委ねられることが多くなった。そこでリソースやスキル、理解のギャップが生じている」とした。

昨今のニーズでは『目まぐるしい法改正にいつどう気づけばいいのか』『行政への法的な届出まで引き下ろした情報がほしい』『申請手続きのマニュアルが放置されたままなので更新したい』といった相談が増加。こうしたリソース不足、理解不足の状態が、意図せぬ法律違反と行政処分を生む要因になっているという。

そのため同社は業界ごとの法制度・条例リストを作成し、必要な許認可届出事項を5W1Hでまとめた「業法別要求事項一覧」も提供。「どの業種のどの規模の企業であれば、どのタイミングでどの機関にどのような申請をしないといけないのか、一覧化しておくことで一定の法的安全が保たれ、スピーディーな対応ができる」と述べた。

現場と経営をつなぐ法務部門の役割

対談のなかで竹内氏は「法務部門が知識をつけるだけでは会社は守れない。それが現場の実務に落とし込まれて初めて会社が守られる」と指摘。内部統制の『3ラインディフェンス』になぞらえ「第1線の事業部門こそリスクオーナーで、2線の法務部門はそれをサポートする立場。1線が自律的にリスクをコントロールできるようにするための支援機能が、2線には求められる」とした。

企業法務が注視すべきリスクや担うべき役割についてディスカッション

また、現場の意識はエスカレーションに直結することにも言及。「現場のリスク情報を経営がいかに早くつかむか。例えば、貸金庫からお金が盗まれているのに4年半も気がつかないのはリスク情報の伝達システムが壊れている」と述べた。

エスカレーションシステムの立て直しについては、中間管理職を経由した「レポーティングライン」と、ダイレクトなバイパスとしての「ヘルプライン」の2本立ての考え方が必要と発言。ただし、これらを機能させるために一番大事なのは「経営者が現場に関心を寄せること」と強調した。

「経営者は現場の困りごとに聞く耳を持ち、現場の課題解決にリソースを割く。その信頼感があれば現場は情報を渡し、信頼感がなければ情報を抱え込む。検査不正や品質不正はその典型。経営者が、自分は現場を見ている、情報をもらえば問題を解決するという姿勢を伝えることがすごく大事」

吸い上げたリスク情報の判断も重要とし、経営へのインパクトを正しく評価・判断するためのリソースやスキルが必要と説明。AI活用の可能性に触れつつ「DXを含め、今後も企業は新たな経営戦略をさまざまに打ち出すはず。戦略とリスクは表裏一体。予想もしない変化が起き、戦略が目まぐるしく変わる時代だからこそ、リスクマネジメントがついていかないとどこかで爆発する」と話した。