イメージ(Adobe Stock)

企業が外部へ環境会計情報を開示する場合、ステークホルダーに正確な情報伝達を図る社会システムとして可能な限り統一性と共通性を備える必要があります。環境省の「環境会計ガイドライン(2005年版)」は、積極的な環境会計情報の公表を推奨し、集計した情報を公表する場合に必要な環境会計の枠組み、把握(測定)すべき項目とその考え方や公表の仕方を示しています。第31回に引き続き、環境会計報告書の公表用フォーマットの内容と事例を紹介いたします。

(1) 環境会計報告書の公表用フォーマットの内容

環境会計報告書の公表用フォーマットには、<本表>と<附属明細書>があり、コストと効果が示されています。その内容は、図表1のとおりです。

図表1 環境会計報告書の公表用フォーマット

               <本表>                             <附属明細書>
  • ①環境保全コスト

(事業活動に応じた分類)

  • ②環境保全効果
③環境保全対策に伴う経済効果
  • ①環境保全コスト(環境保全対策分野に応じた分類)
  • ②主要な環境パフォーマンス指標に係る効果の対比表
  • ③持続的な性格を持つコストに対する環境保全効果
  • ④環境会計要約情報の直近3期間の推移表
⑤分析のための指標に関する直近3期間の推移表

 

図表1の<本表>で「① 環境保全コスト」とは、環境保全のための投資額および費用額のことです。また、個々のコストが環境保全コストに該当するか否かは、支出目的により判断し、また把握(測定)方法については直接把握(測定)が原則ですが、これが難しい場合は、差額の集計按分など実務的に対応可能な方法が提案されています。

「① 環境保全コスト」は、次の(ア)から(カ)の6項目に分類されます。

(ア) 事業エリア内コスト・・・企業等の主たる事業活動により事業エリア(直接的に環境への影響を管理できる領域)内で生じる環境負荷を低減するための環境保全コスト。例えば、公害防止コスト、地球環境保全コスト、資源循環コストなどです。

(イ) 上・下流コスト・・・事業エリアに財・サービスを投入する前の領域(上流域)で発生する環境負荷を抑制する取り組みのためのコスト、事業エリアから財・サービスを算出・排出したあとの領域(下流)で発生する環境負荷を抑制する取り組みのためのコスト並びにこれに関連したコスト。例えば、グリーン購入で負担が増えるコスト、製品や容器包装などのリサイクル・回収・再商品化・適正処理コストなどです。

(ウ) 管理活動コスト・・・管理活動における環境保全コスト。例えば、社員の環境教育コスト、環境マネジメントシステムの構築・運用コスト、環境負荷の監視・測定コスト、環境保全対策組織の人件費などです。

(エ) 研究開発コスト・・・研究開発活動における環境保全コスト。例えば、環境保全に資する製品などの研究開発コスト、製品等の製造段階における環境負荷抑制の研究開発または企画設計コストなどです。

(オ) 社会活動コスト・・・社会活動における環境保全コスト。例えば、自然保護・緑化・美化・景観保持など環境改善対策コスト、地域住民の環境活動支援・セミナーなどの情報提供の社会的取り組みのコスト、環境保全団体への寄与・支援のコスト、環境情報の公表・環境広告のコストなどです。

(カ) 環境損傷コスト・・・環境損傷に対応するコスト。例えば、土壌汚染・自然破壊の修復コスト、環境の損傷に対応する引当金繰入額・保険料、環境保全関係の和解金・補償金・罰金・訴訟費用などです。

以上の6項目に当てはまらないが、環境保全に関連するコストが発生した場合には、「その他のコスト」として、その内容や理由について記載する必要があります。

これに対応して効果は、<本表>の「② 環境保全効果」と「③ 環境保全対策に伴う経済効果」にわけて把握します。まず、「② 環境保全効果」は、環境負荷の発生の防止、抑制または回避、影響の除去、発生した被害の回復またはこれらに資する取り組みによる効果とし、物量単位で測定します。業種によっては、一部貨幣単位で把握するものも含まれます。

「② 環境保全効果」は、次の(ア)から(エ)の4項目に分類され、それぞれ「環境パフォーマンス指標ガイドライン」で示された環境パフォーマンス指標を用いて測定されます。

(ア) 事業活動に投入する資源に関する環境保全効果・・・総エネルギー投入量、特定の管理対象物質投入量、水資源投入量などです。

(イ) 事業活動から排出する環境負荷および廃棄物に関する環境保全効果・・・温室効果ガス排出量、特定の化学物質排出量・移動量、廃棄物等総排出量、総排水量などです。

(ウ) 事業活動から算出する財・サービスに関する環境保全効果・・・使用時のエネルギー使用量、使用時の環境負荷物質排出量、廃棄時の環境負荷物質排出量、回収された使用済み製品、容器、包装の循環的使用量などです。

(エ) その他の環境保全効果・・・製品、資材などの輸送量、輸送に伴う環境負荷物質排出量、汚染土壌の面積、量などです。

また、「② 環境保全効果」は、次式で算定されます。

環境保全効果=基準期間の環境負荷の総量 - 当期の環境負荷の総量

次に、「③ 環境保全対策に伴う経済効果」は、環境保全対策を進めた結果、企業等の利益に貢献した効果とし、貨幣単位で測定するもので、その根拠の確実さの程度によって、次の(ア)実質的効果と(イ)推定的効果の2項目に分類されます。

(ア) 実質的効果・・・確実な根拠に基づいて算定される経済効果で、ⓐ収益とⓑ費用節減があります。

ⓐ収益は、主たる事業活動で生じた不要物や使用済み製品リサイクルによる有価物の売却益です。

ⓑ費用節減は、環境から事業活動への資源投入に伴う費用の節減、事業活動から環境への負荷および廃棄物排出に伴う費用の節減、環境損傷対応費用の節減、その他の費用の節減です。

(イ) 推定的効果・・・仮定的な計算に基づいて推計される経済効果で、ⓐ収益とⓑ費用節減があります。

ⓐ収益は、環境保全目的の研究開発や環境保全投資の貢献による追加的収益額のうち、当期において実現した部分です。

ⓑ費用節減は、環境損傷を予防することによる損害賠償や修復のための費用の回避、企業価値の向上による資金調達コストの節約のうち、当期において発生が回避されると見込まれた部分です。

また、「環境保全対策に伴う経済効果」は、次式で算定されます。

環境保全対策に伴う経済効果(費用節減)=基準期間の費用 - 当期の費用