2018/10/26
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
昭島市に学ぶ。2週間であなたの街の防災力を格段にあげる方法
災害時、冷蔵庫が転倒していなければ備蓄品として使えるのに・・
そこで、多くのメーカーが工夫したのが、賃貸の家でも大丈夫な転倒防止グッズの開発です。でも、天井が強くないと使えないものがあったり、マンションの長周期の揺れや高層階の揺れに対応できなかったり、壁紙の種類によっては使えなかったりするだけでなく、ネジより高額になります。
特に冷蔵庫対策。これが固定されて、扉が開かない工夫があれば、災害時、冷蔵庫の中のものをそのまま備蓄品として食べられることになります。だから、転倒させたくありません。でも、ネジ止め以外の方法ですべて固定しようとすると、出費はネジよりかさみます。それなのに冷蔵庫などでは、耐震震度が6強までの保証しかないものも少なくありませんでした。
さらに、アンケートをとってみても、賃借人のほとんどが家具の転倒防止を実施していませんでした。そればかりか、持ち家の人も、転売を考えて、傷が残ると価値が下がるから、家具の転倒防止は絶対にしないという方も見られました。
それだけでなく、家を購入する資金的余裕がない人ほど、ネジ止めという安価な方法を選べないという現状は、家具の転倒防止実施を現実的にはばむ原因にもなっていました。
そこで、あらためて「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を読んでみたら、面白い事を発見しました。クーラーを設置する時にあけるネジ穴は、賃借人でも原状回復義務は負わないと書いてあります。
ここで、考えてみました。クーラーは日本の生活の中で常識だと思われているから原状回復義務を負わないのでは?だったら、これだけの災害大国では防災も常識のはずだから同じ趣旨といえるはず。それなら、類推適用の法解釈と一緒で、趣旨が同じものは、同じ結論にできるので、家具の転倒防止は常識だから原状回復義務免除としてもいいのでは?と考えました。
ある事項について定めた法規がない場合に,それと類似した別の事項について定めている法規を適用すること。法解釈の方法の一つとされてきたが,厳密には類推適用というべきであろう。自転車の通行禁止という法規があって,オートバイについては法規がない場合に,オートバイの通行も禁止されていると推論するのがその例。
https://kotobank.jp/word/類推解釈-150607
それを思いついた日には、いーこと思いついた!!とFacebookに書き込みをするくらいウキウキしました。
でも、その解釈が本当に使えるのか、また、この原状回復義務を免除するには条例変更が必要なのか(議会の議決が必要なのでなかなか変えられない)、規則変更なのか、ガイドライン変更なのか(これだと行政トップの決断しだい)ということを、関東弁護士会連合会災害対策協議会プロジェクトチーム座長である、弁護士の中野明安先生に相談しました。
このあたりの事を過去のここにも書きましたので詳しくはこちら。
■地震対策に必須の建造物の耐震化と家具固定。でも賃貸物件では家具の固定ができない?防災では勧められ、賃貸借契約では否定されているネジ止めを直視しよう
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2033
災害に関連する法のレジェンドとまで言われている中野先生なので、最初は相談するのも緊張しましたが、相談したその日に、これは重要な事だからすぐ自治体にレクチャーしましょうとおっしゃってくださいました。そして、
2、そして、民間不動産業がすぐ動ける訳ではないから、まず行政が持っている公営物件について実施することを提案したほうが実施されやすいこと
3、すべての家具の転倒防止の原状回復義務を免除すると、うちつける場所の予測がつかなくなる可能性があるので、まずは場所が決まっている冷蔵庫だけの実施を訴えるということだと実現しやすい提案になりやすい
という行政が受け入れやすいアイデアをその場でするするーっと考えてくれて、さすがレジェンド!と感動したのでした。
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