最終回 戦後日本のアメリカ流マネジメント手法の導入
品質管理(Quality Control)導入の過程を振り返る

眞崎 達二朗
眞崎リスクマネジメント研究所代表、GRC ジャパン株式会社顧問。コンサルビューション株式会社顧問。株式会社ニチオン顧問。京大法学部卒。1957 年住友銀行入行。本店支配人などを経て、同行退職後、山之内製薬株式会社役員、銀泉株式会社役員など歴任。05年6 月中小企業庁「中小企業BCP 策定運用指針」作成プロジェクトの有識者会議メンバー。
2012/11/25
リスクマネジメントの本質
眞崎 達二朗
眞崎リスクマネジメント研究所代表、GRC ジャパン株式会社顧問。コンサルビューション株式会社顧問。株式会社ニチオン顧問。京大法学部卒。1957 年住友銀行入行。本店支配人などを経て、同行退職後、山之内製薬株式会社役員、銀泉株式会社役員など歴任。05年6 月中小企業庁「中小企業BCP 策定運用指針」作成プロジェクトの有識者会議メンバー。
1.品質管理(Quality Control)導入の過程
我が国における品質管理(QualityControl)導入の過程については、1997年8月刊行の「日科技連創立50年史」に詳述されています。http://www.juse.or.jp/about/pdf/history/history_50_2.pdf
我が国が第二次世界大戦に敗北した翌年の1946年11月に、連合軍最高司令部(GHQ)の担当者が統計的品質管理の導入を勧告しました。当時は我が国の産業界では品質管理に関する認識がいたって希薄でした。1949年、日科技連(日本科学技術連盟)が経済安定本部から「海外技術調査」の委託を受け、この調査が品質管理セミナー実施に結びつきました。
1949年9月に第1回「スタチスカル・クゥオリティ・コントロール・セミナル」が開催されました。1950年6月にアメリカからデミング博士が初来日し、各地で講義を行いました。9月に統計的品質管理の研究のため数理統計の研究者、企業の技術者の自由参加による研究会が発足しました。東京大学の石川馨教授をはじめ、東京工業大学、神戸大学、総理府、日科技連、太平鉱業、三井化学工業のメンバーが参画しています。同年後半には日本科学技術連盟編「品質管理教程」を作成、教材も充実してきました。1951年9月には第1回デミング賞の授賞式が行われました。
ここで注目すべきことは、導入のスピードの早さです。戦後我が国の技術の後進性が極めて大きいことが認識され、官民を挙げて、遅れを取り戻し産業の合理化と高度化を実現しようと努力していた時代であったからだと考えられます。
日本科学技術連盟は、その後経営トップのための講習会、部課長クラスのための講習会などを次々に開催し参加者も急増しました。例えば1954年に東京、大阪で開催された部課長クラスのための講習会には300名が参加したと記録されています。1955年8月デミング博士来日の際、箱根・山のホテルで開催された経営者のためのセミナーには46社48名のトップが参加し、参加した経営者は「よい話でした。何時間聞いても飽きません」「帰ったら早速品質管理をやります」と口々に感激を語り合ったと記録されています。また、職組長クラスへの講座も並行して開催されています。
1962年4月「現場とQC」が創刊され、5月に現場のQC活動に対しQCサークル本部が設置されました。かくして、品質管理の普及活動は経営層・管理層・現場の3本立てとなり、QCサークル活動は“カイゼン”の名のもとに海外でも取り入れられました。
リスクマネジメントの本質の他の記事
おすすめ記事
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方