さて、今回の「白い粉」がもし、炭疽菌で、透明なポリ袋に入っていなくて、封筒を開けたとたん、飛び散ったら、どのような事態になっていたでしょう? 炭疽菌は感染すると死亡率が高くテロに用いられることが懸念されています。
警察は、おそらく全員オフィスを出して別の部屋で待機させ、サンプルを取り調べることになるため、もし炭疽菌ではなかったとしても、オフィス内にいた従業員全員が数時間は家にも帰れなくなるかもしれません。仕事もできない状況でしょう。仮に炭疽菌が本当に入っていたら、微量でも感染のチェックが必要になり、オフィスの機能は完全にとまってしまいます。まったく違う菌で単なる悪戯犯だったとしても、小麦粉でもない限りは、調査に時間を要することになります。さらに、もし封筒を開けた途端、オフィス内が大騒ぎになって皆が外に逃げ出したら、だれが白い粉を浴びたのかもわからない状況になり、対応はさらに複雑になります。
こうイメージを膨らませると、封筒を開けてしまってから対応を考えたのでは遅い、ということがわかっていただけるかと思います。あやしい封筒が届いた場合の対処方法、通報体制、社員への周知、対応方法などを事前に整備しておくことが重要です。
ちなみに2001年のアメリカ炭疽事件を受け、国交省では、総合政策局複合貨物流通課などが以下の文章を発表しています。

米国において、郵便物に炭そ菌を含有・付着させる方法によるテロの疑いがある事件が発生しておりますので、宅配便の利用者の皆様にも、受け取った宅配貨物に不審な点があった場合、次の点に御留意を御願いします。なお、以下は米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC)及び米国連邦捜査局(FBI)が米国在住者に対して行っている呼びかけの内容に基づくものです。

不審箇所の特徴の例
(1)送り主の氏名・住所等に覚えがない
(2)受取人の氏名・住所等の記載に誤りがある
(3)送り主の住所と関係ない地域から発送されている
(4)貨物の表面から白い粉等の異物が漏れている
(5)内容物の記載に対し実際の形状、重量が不自然である、又は異臭がある
 
不審な宅配貨物を受け取った場合の対処
まず、「パニック」にならないで下さい。
 炭そ菌は皮膚、胃腸内、又は肺に感染症を引き起こす可能性がありますが、傷口等にすりこまれるか、飲み込むか、又は細かい霧状の状態で吸い込まなければこのおそれはありません。また、早期の治療によって、炭そ菌の芽胞(細菌の胞子のようなもの)が付着した後でも発症を防ぐことができます。さらに炭そ菌は人から人へ伝染することはありません。
貨物を開封、開梱していない場合
(1)当該貨物を振ったり、揺すったり、開封・開梱したりしない
(2)内容物が漏れないよう当該貨物をビニール袋又は他の種類の容器に入れる
(3)もし、そのような容器が手近になければ、衣服、紙、ごみ箱など何でもかまわないので当該貨物を何かで覆い、その覆いをはずさない
(4)その後、部屋を離れドアを閉めるか、できるだけ近づかないようにする
(5)手を石鹸と水でよく洗う
(6)最寄りの警察署又は宅配事業者営業所に通報する


 貨物を開封、開梱するなどして、粉が床などにこぼれた場合
(1)その粉を掃除しようとせず、こぼれた内容物を衣服、紙、ごみ箱など何でもかまわないので、直ちに何かで覆い、その覆いをはずさない
(2)空調装置が作動している部屋で粉が霧状になった場合は、空調装置を停止する
(3)その後、部屋を離れドアを閉めるか、できるだけ近づかないようにする
(4)粉が顔に広がるのを防ぐため、直ちに石鹸と水で洗う
(5)最寄りの警察署又は宅配事業者営業所に通報する
(6)粉の付着した衣服はできるだけ早く脱ぎ、ビニール袋か密閉できる容器に入れる
(7)石鹸と水でできるだけ早くシャワーを浴びる。この場合、漂白剤や他の殺菌剤を皮膚に使わない


http://www.mlit.go.jp/jidosha/terro/terro01_.html