連休前に企業がすべき対策
看板類は建物の中に、PCは閉じて
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2019/10/10
危機管理の要諦
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
前号では、台風19号の接近について「従業員に呼びかける対策」を書いたが、連休前に、企業に是非やってほしいことが建物周辺の点検だ。街中のオフィスビルならベランダにおいてる小物、店舗なら看板、工場なら風で飛ばされる物がないかを点検し、それらがあれば、できるだけ建物内に収納してから帰宅をするように従業員に促してほしい。
昨年、大阪を中心に大きな被害を出した台風21号では、風速45メートルという強風に加え、規模の大きな建物の周辺では複雑な「ビル風」が発生したと見られており、それが大きな被害をもたらしたと考えられている。ビル風は、建物の形状・配置や周辺の状況などにより、非常に複雑な風の流れとなる総称で、いくつかのタイプに分類される。以下、ウィキペディアから引用する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AB%E9%A2%A8
■「剥離流」
風は建物に当たると、壁面に沿って流れていくが、建物の隅角部のところまでくると、それ以上壁面に沿って流れることができなくなり、建物から剥がれて流れ去っていく。この建物隅角部から剥がれた風はその周囲の風よりも速い流速をもつ。これが剥離流である。
■「吹き降ろし」
風は建物に当たると、建物高さの60~70%付近(分岐点と呼ばれる)で上下、左右に分かれる。左右に分かれた風は、建物の背後に生じた低い圧力領域に吸い込まれるため、建物の側面を上方から下方に斜めに向かう速い流れとなる。これが吹き降ろしである。吹き降ろしの現象は建物が高層であるほど顕著であり、それだけ上空の速い風を地上に引きずり降ろすことになる。高層建物の足下付近では、吹き降ろしと剥離流が一緒になるため、非常に速い風が吹くことになる。
■「逆流」
分岐点より下方に向かう風は、壁面に沿って下降し(下降流)、地面に到達すると、一部分は小さな渦をつくりながら左右に流れ去っていくが、一部分は地面に沿って上空の風とは反対の方向に向かう。この流れは逆流と呼ばれる。特に、高層建物の前面に低層建物があるような場合は、ますます速い流れとなる。
このほか「谷間風」や「開口部風」「街路風」「渦領域」「吹き上げ」などがも挙げられている。
風速により威力は異なる。気象庁によれば瞬間風速40メートルで走行中のトラックが横転する可能性があり、60メートルになると住家が倒壊、鉄骨構造でも変形する可能性がある。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html
2005年に米国ニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナは最大風速が78mを記録したが、小石1つで住宅や店の窓が粉々に割れるなど、風害だけでも甚大な被害があったことが報告されている。風速次第では、高層ビルの窓ガラスが割れる可能性も否定できない。割れ落ちた窓や、小石、看板など町中のあらゆるものが凶器となって人々を襲う可能性もある。
ブラインドがあれば、万が一の被災に備え、ブラインドを下ろし、PC類なども窓からはできるだけ離して、ノートPCは閉じておく。台風や豪雨による雨の影響で、自動火災報知設備の誤作動が発生することもあるようだ。
このほか、豪雨や高潮による浸水なども想定し、重要な設備やデータが浸水などで被災しない対策も重要だ。東京都が2018年3月30日に発表した「想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図」では、最悪の場合、都内東部を中心に17区に浸水が広がり、23区の3分の1にあたる約212平方キロメートルが浸水するという想定となっている。
最後に、週末も営業をしている業種では、再度、社員に対して命を最優先に行動することを伝えてもらいたい。
(了)
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