東京新聞・2018年12月18日夕刊より

東京新聞同記事の<解説>は安倍政権の「専守防衛なし崩し」に警告を発する。

「新たな防衛大綱と中期防は、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法を制定し、米軍との一体化を進めてきた安倍晋三首相の安全保障政策を、自衛隊の兵器面で補強する内容だ。
政府は護衛艦「いずも」を事実上の空母に改修することに加え、最新鋭ステルス戦闘機F35やイージス・アショアを米国から導入する方針を改めて示した。これらは、安保法に基づき、地球規模で米軍支援拡大を可能にする兵器と言える」
「新大綱と中期防に記された政策が実現すれば、他国の攻撃を準備する米戦闘機への艦上給油や、米国に向けて発射された弾道ミサイルの迎撃を図ることが可能になる。政策判断として保有してこなかった敵基地攻撃能力も、兵器の上では備えることになる。
政府は新大綱で『専守防衛などの基本方針の下、今後も平和国家の歩みを変えることはない』と唱える。だが、今回導入を決めた兵器は、専守防衛をなし崩しに変質させる危うさをはらんでいる」(上野実輝彦氏)。鋭い指摘である。

「防衛計画の大綱」は防衛力の整備や運用などに関し、政府が今後10年程度を見越して定める基本指針である。1976年に初めて策定され、1995年、2004年、2010年、2013年に改められた。2017年8月に安倍首相が小野寺五典防衛相(当時)に、通例の改定期間を前倒しする形で見直しを指示していた。

朝日新聞の<社説>は警告する

朝日新聞(2018年12月23日付)の「社説」から適宜引用する。見識ある警告であり熟読に値する。

「<防衛費の拡大 米兵器購入の重いツケ>
安倍政権による2019年度の当初予算案で、防衛費が5兆2574億円に膨らんだ。今年度(2018年度)当初より1.3%増え、5年連続で過去最大だ。来年度は『防衛計画の大綱』と『中期防衛力整備計画』の初年度にあたる。中国や北朝鮮の脅威に軍事的に対抗する姿勢が鮮明になり、米国製兵器の購入に拍車がかかっている」(私見:「米国製兵器の購入に拍車がかかっている」の一文に注目しなければならない)。
「特に目立つのが、陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』の整備費1757億円と、F35戦闘機6機の購入費681億円だ。F35は147機体制を目指しており、将来的な追加取得費は1兆2000億円にのぼる。一部は、空母化される『いずも』型護衛艦での運用が想定されている」(私見:「空母」と断言してもいいのではないか)。
「陸上イージスにしろ、空母にしろ、巨額の費用に見合う効果があるのか、大きな疑問符が付く。それでも安倍政権が導入に突き進むのは、トランプ米大統領が掲げる『バイ・アメリカン(米国製品を買おう)』に呼応してのことだろう」(私見:トランプ大統領の恫喝に安倍政権はひるむばかりなのか)。
「日米の通商交渉をにらみ、米国の貿易赤字削減に協力する姿勢をアピールする狙いもありそうだ。しかし、軍拡競争や地域の不安定化につながりかねない兵器の大量購入で、トランプ氏の歓心を買うような振る舞いは、およそ見識を欠く。見過ごせないのは、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が、安倍政権で急増していることだ。来年度は過去最大の7013億円。今年度に比べ、一気に3000億円近く増えた。政権発足前の12年度の1380億円の約5倍となる」(私見:問題の本質を解くカギはFMSである)。
「こうした高額な兵器の代金は、複数年にわたって分割払いされる。後年度負担は将来の予算を圧迫し、なし崩し的な防衛費増額につながる恐れがある。来年度の契約に基づき、20年度以降に支払われる後年度負担は2兆5781億円。実に、年間の防衛予算の半分に迫る規模だ」。
「厳しい財政事情下、費用対効果を見極め、優先順位をつける必要性は防衛費と言えども変わらない。歯止めなき予算の増額は、とても持続可能な防衛政策とは思えない。米兵器の大量購入は将来に重いツケを残すことを忘れてはならない」(私見:「歯止めなき予算の増額」に身震いする)。

謝辞:東京新聞と朝日新聞の記事を引用させていただいた。謝意を表したい。

(つづく)