2017/03/10
事例から学ぶ
本誌5月25日号 (Vol.25) で紹介した、 津波で壊滅的な被害を受けがらもBCPの発動により被災後8 日で事業を再開させたリサイクル会社の株式会社オイルプラントナトリ (宮城県名取市)。現在同社は プラントの全面復旧を進めながらも、 既に被災前と同じ売上を確保するまでに事業レベルを回復させた。 同社のBCPを支えたものは何か。 再び現地を訪れた。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2011年9月25日号(Vol.27)掲載の記事を、Web記事として再掲したものです(2017年3月10日)。役職などは当時のままです。

■BCPで事業拡大
海岸から1キロメートルほどの場所に工場を持つ オイルプラントナトリは、3月11日の被災で工場全体が壊滅的な被害を受けた。
プラントはすべて水没し、運搬車両の約半分が津波に流されるなど、自社では廃油の精製ができなくなったが、BCPでは、自社の操業が止まった際に備え、他の業者からの協力体制の理解を取り付けており、それに従い、震災からわずか8日で事業を再開させた。
多くの石油メーカーまでが被災する中、顧客企業には工場の操業などに欠かせない燃料(再生重油)を届け続け、また、地域の安全確保として、被災したガソリンスタンドや、陸に打ち上げられた船からのガソリンや重油の回収を行った。
その取り組みは、新聞やテレビでも大きく報じられ、現在、同社の取引先は震災前より増えているという。中小企業庁のBCP 策定運用指針には、BCP策定の効果として「緊急時でも中核事業を維持・早期復旧することができ、その後、操業率を100%に戻したり、さらには市場の信頼を得て事業が拡大したりすることも期待できる」とあるが、まさに事業が拡大する勢いを見せている。
今号では武田洋一社長と、星野豊常務に改めて BCP を支えた要因について振り返ってもらった。 プラントはなおも全面復旧していないが、今年9月にはほぼフル稼働する見通し。さらに、数年以内では代替工場の建設も視野に入れている。
【1、リスク管理体制】
「さかのぼれば、平成14年から弊社の危機管理は始っています」と武田社長は振り返る。 同社のリサイクル加工品の多くを納入する岩手県のセメント工場が、台風の影響により近くを流れる河川の氾濫で浸水して約2カ月操業停止という事態 に遭遇した。この時、廃棄物の排出先企業へ不安や 心配を最小限に抑えるべき対応を迅速に実施し、混乱を避けられたのが、危機管理の重要性を認識したきっかけとなった。
「取引先企業様からは先を見通した提案やコーディネイトのお陰で、廃棄物管理上の問題を起こすこと なく大変感謝されました。常に先手となる対応の重要性・きめ細かな情報の提供を行うことで存在価値をアピールすることができたと思います」(星野常務) 。
また、2008年のリーマンショックでは、同社も大きな影響を受けたが、売上減少を食い止める施策として営業エリアを拡大(東京・千葉・神奈川・静岡) 。このことが、今回の東日本大震災でも県外業者の協力を得る上で役立った。
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