自治体は適切な予算配分を

以下は、3名体制のポンプ車隊1台の出張所における現状課題と対応として、ワークショップで発表された内容である。

・学校入校、研修、けが、離職や急な休みなどで、やむを得ず消防職員が2名しか勤務していないこともある。そのため、出動指令の受信時に直近の消防団員や消防訓練を受けた役場職員が駆けつけたり、非番日の職員を迎えに行って勤務してもらったりして、現場に向かうこともある。

・消防団員や役場職員に「准救急隊員」を増やしたいが、准救急隊員になるためには92時間の講習を修了する必要があり、その人的・予算的な余裕がない。
http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h29/h29/html/2-5-5-5.html

・入電時点で炎上火災であったため第2直近隊が出場したが、現場到着までに20分以上もかかった。1隊3名と消防団2名の先着隊が消火作業するも火勢鎮圧に間に合わず、第2直近隊の到着時にはすでに大炎上していた。

・火災建物の場所によっては、裏山に延焼拡大して山林火災に発展することがある。家畜施設のわらなどに延焼して家畜が逃げることができなかったケースでは、施設の全焼ばかりか動物の焼死、焼死体の処理コストなど、経済的な損失なども含めて大惨事になった。

・消防車の緊急走行は2名以上と規定されているが、人員を確保できない事情から、指揮車や支援車の緊急走行を職員1名で行うことが以前から行われている。

・山間部の消防本部などでは、休みやけがなどの事情でやむを得ず2名勤務になった場合、火災出動には直近署所から3〜4隊の消防車が選択される。延焼拡大した場合はさらに遠くの出張所へ指令がかかるようになっているが、現場到着に15〜20分以上はかかっている。場合によっては、炎上火災の入電時に非番日の職員を3人目の職員として非常招集をかけ、住宅地に住む非番日の職員を非緊急走行で迎えに行き、その職員の搭乗後に緊急走行して現場に向かっている。

以下は、ポンプ車隊3名と救急隊(1台)2名体制の出張所における現状課題と対応として、ワークショップで発表された内容である。

・救急車の運行は、午前9時から午後5時までは本署の日勤職員や隣接する役場職員が搭乗し、夜間休日は非番職員を自宅まで非緊急走行で迎えに行き、3名揃ったところで出動するなど、ギリギリの状態が続いているらしい。ただ、本署の日勤職員は、人員が足りないことを十分に知っていながらも火災や救急時に出動することに難色を示すことが多く、隔日勤務者のストレスがたまっている。

・病院搬送を必要とする要救助者がいる火災出動の場合、消防車と救急車が配備されている3名勤務の消防出張所では、ポンプ車に2名乗車、救急車の運行は1名が行い、救急資格者が救急行為を行う。その際、緊急走行の運転は救急資格者である必要はないとして、緊急走行訓練を受けた役場職員や消防団員に運転を頼み、救命士の職員が救急車の後部で患者の処置を行うなど、どうにか「最低2名以上」を確保して救急出動しているところもある。

・日中は救急隊員と役場職員の2名で救急車を運用し、夜間は運転を委託した外部機関(上級救命講習)受講者が救急対応している。

・出張所は最低3名勤務としているが、火災出動で救急車が必要な場合は、共同指令センターから同時指令を行い、直近(緊急走行で約20分)の救急車が来る。ただ、その救急車の出動時には救急管内に救急車がいなくなるため、対応が遅れて問題になったことがあった。今は、ポンプ車に2名乗車、救急車に1名乗車して出動し、救急出動が必要な場合は、緊急走行訓練を受けた消防団員が救急車を運転して病院搬送している。

このような消防事情の背景には、人口減少と時期的な高齢者対応事情が背景にあると思う。しかし、県知事や市町長が消防に対して、「火災や救助を要する事案も減少し、消防装備など使う頻度が低いものに金を出せない。ほかに金を回す必要がある」と考えているなどして、結果的に住民の生命・身体・財産・生活の安全のリスク予防や発災時の現場対応が十分でない場合、多くの犠牲者を出して安全配慮義務を問われるなどして、大きく取り沙汰されることになるようなケースも今後十分に考えられる。

さらに、住民自らが「家族の安全を保てない場所には住めない」と判断して移住するなど、さらなる人口減少につながる一因となる可能性もある。