1.火災現場におけるサーマルカメラの活用方法
一般的にサーマルカメラは、物体、車両、人物から常に放射される赤外線を感知して画像を生成し、静止画を撮影できるため、火災原因調査上、有力な活動データを得ることができる。

サーマルカメラは、あくまでも活動に必要な熱情報を収集するための手段であり、活動方針を教えてくれるわけではないため、熱感知後の活動判断は隊員によって行う。

サーマルカメラは、あくまでも活動に必要な熱情報を収集するための手段で有り、活動方針を教えてくれるわけではないため、熱感知後の活動判断は隊員によって行うが、濃煙時の人命検索での活用時、プライマリーサーチでモニター出来ない物陰だけサーチしたり、550度まで温度測定可能なため、温度測定によりフラッシュオーバーの発生予知、室内上部・下部の測定により進入の可否判断にも活用できる。

また、要救助者や隊員であれば、体温36.5度(華氏98度)程度であるため、その温度で記憶しておけば、要救助者等の全身、又は一部の体温を感知し識別が容易となり活動の迅速化に繋がる。

元々、サーマルカメラは人命救助を目的に消防では使われてきたが、下記のように自然災害時やそれ以外にも活用できる。

・夜間における広範囲の捜索時(フラッシュライトとの併用)。
・停電下の暗闇での人命検索時(フラッシュライトとの併用) 。
・徘徊、行方不明者、犯人捜し。
・ヘリに既存のサーマルカメラと同時に後部席隊員による垂直人命捜索や山林火災での延焼範囲確認。
・ヘリの地上部隊の活用。
・海上における船舶からの要救助者水面捜索。
・泥まみれの識別困難な人体の捜索。(ただし、濡れた泥が身体中に厚くついている場合、映らない可能性がある)
・マンホール内、土管、側溝橋の下などの捜索時。
・コンビナート、移送、輸送、プラントで化学薬品、毒劇物等の化学反応などハズマット事案活動時。

たとえば、火災現場の人的覚知においては、暗闇の中で逃げ遅れた要救助者やペットを発見したり、また現場活動中に倒れた隊員のほか、放火犯が隠れていたりすれば、すぐに特定できる。また物的覚知については、サイズアップ時に屋外から、火災建物の燃え方に応じた火点の予測や燃焼範囲、また、燃えていない部屋なども知ることができる。

その他、火災現場活動においては下記のようなメリットもある。
・今はホースを命綱がわりにしているが、濃煙時にホースを見失っても、サーマルカメラにより、ホースを確認することができる。
・サーマルカメラによるドアの温度チェックすることで、手をかざすことなく一目でわかり、ドア開放によるリスクを追わずに済み、温度の層がドア越しに確認できる。
・隊員全員が中性帯を把握できることで、屋内活動が安全、かつ、確実に行えること。
・サーマルカメラで初動期から静止画を撮影することは、火災原因調査において、非常に有効であること。

ほとんどの方は使ったことがあると思うため、サーマルカメラの特性を詳しく書く必要はないと思うが、壁や家具、ドア等を隔ててまで、壁から離れている要救助者の赤外線や炎を感知することはできないため、サーマルカメラの特性をよく知っておくことが重要である。

もちろん、シーリング、壁内の残火処理には従来から使われているが、アメリカでは「財産の保護」目的で、熱のないところには水を掛けないことで、家主の財産を守るためにも使われている。

また、サーマルカメラは、陰影、逆光、斜光、暗闇や、カムフラージュされた物体など、光条件をほとんど気にする必要がない。

2.サーマルカメラを活用した火災現場でのサイズアップと消火活動手順
※必要に応じて撮影も行い、すべての覚知情報は無線により情報共有する。
※開口部前で進入管理する隊長にも安全管理のため必要。
※(1)目視、(2)サーマルカメラによる検知、(3)活動判断を繰り返す。
・現場到着時、目視による全体の火災状況確認(約20秒以内)。
・サイズアップ者以外は、空気呼吸器着装確認と放水準備(高圧ホース等含む)。
・関係者と接触できれば、逃げ遅れ者の情報収集と火点情報収集(場所と危険等)。
・先着隊による建物外部からの目視による360度サイズアップで火点と思われる壁面や窓から覗いたエリアをサーマルカメラを使って確認しながら、無線による情報共有。
・火点が特定できたら、可能な限り、開口部は最小限に開けて、火点に短距離な開口部から、直接放水により、火点室内冷却と火点攻撃を外部から行う。
・要救助者が居る場合は、屋内のプライマリーサーチをサーマルカメラを活用して素早く行い、冷却と消火等火点を攻撃しながら、2名で屋内進入し、1名がサーモカメラ、もう1名が放水隊員となる。
・サーモカメラで要救助者やペット等を探しながら、もし、空いている部屋のドアがあれば閉めて、財産の保護を行う。
・要救助者を発見した隊は、救助を優先し、消火は他隊や後続隊に任せる。
・もし、要救助者を検索中に壁内部に熱を確認した場合は、湯の配管などではないことを確認し、残火や電気火災の範囲などを予測し、写真を撮影する。
・隣接建物等への延焼の可能性がある場合は延焼の可能性のある範囲をサーマルカメラで確認し、撮影すること。
※残火状況、延焼の可能性のある範囲は証拠として撮影しておくこと。
など。