(写真AC)

はじめまして。フォーサイツコンサルティングの五十嵐雅祥(いがらし・まさよし)と申します。弊社は、リスクマネジメントの専門コンサルティング会社として、2006年に設立しました。私も日々、多くの企業でリスクマネジメントに関するお手伝いをさせていただいています。

さて、皆さんは(または皆さんの会社では)、何のためにリスクマネジメントを行う必要があると考えていらっしゃいいますか?

「取引先からの要請があるので」「リスクが起こってしまったときの損失を少なくするため」……などさまざまな理由があると思いますが、私は、リスクマネジメントの目的はズバリ「会社を倒産させないため」だと思っています。会社が倒産する理由は最終的に「収入」<「支出」という財務的破綻が原因となりますので、リスクマネジメントとは「収入」に係るリスクと「支出」に関わるリスクを管理する手法とも言えます。でも、社長や財務部門だけが考えればいいことではありません。収入や支出に関わるリスクとは、言い換えれば本来あるべき姿との「差」であり、その差を生じさせる要因は、社員一人ひとりの行動にある、その行動を管理するのがリスクマネジメントです。従って、経営への影響を考えないリスマネジメントはあり得ませんし、従業員一人ひとりにどう当事者意識を持たせるかがリスクマネジメント活動の最も重要で、難しい部分にもなります。その前提で、この連載では企業の収入・支出に関わるリスクを大きく4つのテーマに分け(①戦略リスク、②オペレーショナル(企業内部)リスク、③ハザード(企業外部)リスク、④財務リスク)、毎回1つずつリスクの事例と、それに関する解説および対策のポイントを考察していきたいと思います。

□事例 入札のために座席シートの安全基準を下げる

中堅製造メーカーA社は、高速鉄道車両用の座席(シート)の製造に関する入札に参加することになりました。もし落札できれば、A社の業績の向上に大きくつながるビッグプロジェクトということで社長の期待も大きく、プロジェクトチームを組成。Bさんはプロジェクトリーダ-に任命されました。

入札日が迫ってきたある日、ライバル社の状況を検討する会議の席上、A社のコストがやや割高になっていることが分かりました。しかし、下請けには既にギリギリまでコスト削減の要請を行っており、どう頑張ってもこれ以上のコスト低下は望めそうもありません。ただ、あとほんの少しだけ安くできれば、ライバル社を抑えて落札できる状況にもあるようです。そんなある日、プロジェクトメンバーのCさんからこんな提案がありました。「車両メーカーの指定してきた安全基準は過剰すぎる。少しだけ基準より外れた値で作ったとしても、人の命に係わることなどないはずだ。検査も全て社内で行うのであるから、検査データの数値も何とでもなるだろう……」。

BさんはCさんの提案を受け入れました。Bさんの決断により、求められた安全基準の値にやや達しないけれど、大幅なコストダウンに成功したA社は無事落札に成功。車両メーカーから大量に受注を受け、業績も大幅に向上しました。

あの内部通報が行われるまでは……。

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