横から口を出してはいけないと思いつつ(被災者に寄り添うために)【熊本地震】(4月16日のFBよりその2)

室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
2016/04/16
室﨑先生のふぇいすぶっく
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
横から口を出してはいけないと思いつつ、被災者のことを思うとつい「私見」を述べたくなります。長文かつ身勝手な主張ですが、一考いただければ幸いです。
現地に行っていないので、状況判断にミスがあるかもしれません。その判断ミスゆえの間違った意見かもしれません。そのときは、叱責ください。ただ、テレビ等の報道や先遣隊等からの報告を聞く限り、被災者は様々な支援を強く求めていることは「確か」だと思っています。
(1)避難所の環境がハード、ソフト、ヒューマンすべての面で整備されておらず、ストレスが極限まで高まっている。となれば、避難所の環境整備や足湯などによる心のケアも欠かせない。おいしい食事も提供してあげたい。
(2)洗面具や化粧品、乾電池などが手に入らず困っている被災者が多い。「うるうるパック」のような生活必需品を一人ひとりに手渡す差し入れサポートをしてあげたい。
(3)構造的には安全であっても、家の中が転倒家具や落下物が散乱していて帰宅できない被災者も多い。建築の専門家とタッグを組んだ「住まい片づけ隊」も欲しい。
とはいえ、大きな余震が起きる可能性がある、危険な状態で家屋などが放置されているという「大きなリスク」がある以上、被災現場に入ることは許されません。また、行方不明者の捜索、緊急道路等の啓開、土砂災害への対応などが優先される段階で、その障害となるボランテイアの活動は戒めなければなりません。「功を焦って無暗に」飛び込んではならないのです。
かといって、「そこに溺れている人がいるときに、濁流に飛び込むのは危険だから、濁流が収まるまで待とう」と言っていてよいかと思うのです。「橋の上からロープは投げれないか、救命胴衣をつけて飛び込めないか、水泳技術に長けた人を呼んでこれないか」など、飛び込めないなりに救命をはかる手立てを講じないといけないのです。
熊本の近くの玉名や菊池に集まって、全国から来る救援物資を仕分けして、一人ひとりのために仕分けした袋や携帯用の電池などを自衛隊などのプロに頼んで避難所に届けてもらう。おいしいご馳走を久留米でつくって、避難所まで運送会社に頼んで運んでもらう、といったことはできるかもしれません。
それ以上に、本当にボランテイアが避難所に入れないのか。危険度も少なく、支援者が入れる避難所については、しっかり教育と安全対策を講じるという前提で、ボランテイアが避難者の見守りや援助をすることはできるように思う。
要は、「危険だから入るな、邪魔になるから入るな」と声高にボランテイアに注意していても、いまの被災者は救われないということです。どうすれば被災者の気持ちに寄り添うことができるか、震災関連死や震災ストレス病を回避できるかを、みんなで知恵を出しあって答えを出したいと思います。
(4月16日FBより)
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