2019/05/17
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
頼りになるABS
では急ブレーキをかけた場合は、どうなるでしょうか? 時速40キロで走っていた場合を想定してみます。秒速に直すと、約11.1メートルです。
ハンドルの時と同様に、10メートル手前で危険に気づいたと仮定します。ドライバーが危険を察知してブレーキを踏み、実際にブレーキが利き始めるまでの時間遅れは、一般に0.8秒ぐらいと言われていますから、10メートル手前で気づいても、0.8秒間はブレーキはかからず、約8.9メートル進んでしまいます。それでも障害物の1.1メートル手前から減速が始まるということになるので、多少なりとも衝突エネルギーを小さくすることができる、ということになります。
このことから、一般論として危険回避にはハンドル操作よりブレーキを優先させたほうが良いということになります。

もうひとつ、ハンドルによる回避で注意しなければいけないのは「切ったら適切に戻さなければならない」ということです。道路上で急ハンドルを切るということは、多くの場合、クルマは道路から飛び出す方向に向かいます。これを適切に軌道修正できなければ、道路から飛び出して二次被害を生じることになります。大津の事故がまさにこの状況でした。
この時、ESC(後ほど詳しく説明します)が付いていれば、冷静にハンドル操作さえすれば軌道修正は可能です。しかしESCが付いておらず、クルマが横滑りを始めてしまったら、訓練されたドライバーでも容易な作業ではありません。つまりハンドル操作による回避は「回避できる可能性はほんの少し高まる代わりに、二次被害が生じる確率が大きく高まる」ということです。
ところで、急ブレーキと言われても、タイヤがロックしてしまって(ブレーキが強く利いて回転しなくなること)ハンドル操作ができなくなるのでは? と心配される方もいるのかもしれません。でも、今はほとんどの車にABS(アンチロックブレーキシステム)がついています。ABS標準装備以前に教習所で習った方の中には、急ブレーキは良くない事と思いこみすぎている方もいますが、今はブレーキを思い切り踏んでも大丈夫なのです。
この、ABSがついている車で、ブレーキを強く踏み込むとブレーキペダルが振動したり、「グググ」というような音が出る場合があります。これに驚いてペダルを離してしまったりすると、ABSの効果がなくなります。そういうシステムということをしっかり知っておいて、踏み続けるためにも急ブレーキの練習ってやっておいた方がいいですよね!
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/09
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方