出典:写真AC

意外とクルマは曲がれない

ちょっと細かい計算になるので、苦手な人はここ、スルーして結論だけ見ていただければと思いますが、ハンドルは片側にどのくらいくるくる回せるかというと、だいたい1.5〜2回転回るようになっています。間をとって1.75回転だとすると、角度でいえば630度まで(360度×1.75回転)ハンドルは回せるってことになります。

でも、さっきも書いたように、人がとっさに回せるのは180度程度です。630度分の180度だから、頑張っても29%しか回せていないってことになりますね。

そして乗用車だと前輪の最大切れ角というのは、概ね35度前後で設計されているそうです。だとすると35度の29%しか動かせないのだから、実際にタイヤの向きが変えられるのは、せいぜい10度ぐらいです。

しかも、それでクルマの向きが10度変わるのかといえば、そうはなりません。ハンドルを切ると「スリップ角」というタイヤの向きと進行方向のズレが発生するので、クルマの向きが変わる量はタイヤの角度より小さくなってしまうのです。これを3度ぐらいと仮定すると、実際のクルマの向きは7度程度しか変えられないという事になります。

頑張って7度。

出典:写真AC

そして、クルマが瞬間的に7度向きを変えたと仮定して、どれくらい車を横に移動させられるか計算すると、

障害物の5メートル手前で向きを変えたとしても、横方向に動けるのは、tan(三角関数のタンジェント)7度×5メートルで、約61センチにしかなりません。実際には、ハンドルを切ってからクルマが向きを変え始めるまでには時間の遅れがありますから、10メートルぐらい手前でハンドル操作して、やっと61センチの回避量ということになります。

クルマのほぼ正面に人がいたら、避けるのは絶望的ってことですよね。