2019/05/21
本気で実践する災害食
ライスクッキーが好評
大阪北部地震(2018年6月18日朝7時58分 マグニチュード6.1)
これもつい先日のことですが、東京出張の前日、私は同じく帰宅困難者のことで電話をしていました。相手は大阪府島本町役場です。私はあちこちの危機管理課によく電話をします。大ボケの係員が多い中、この町の係員は「おやっ」と好印象が残りました。そんなわけで、朝から電話をしてみたわけです。
「帰宅困難者の対応をお聞かせください」。男性は次の内容を語ってくれました。興味深いので皆さまにお知らせします。
「地震直後の朝、JR島本駅周辺には緊急停止した車両から帰宅困難者が次々に降りて止まりました。主に通勤客です。そこで、町役場はすぐさま町の施設『ふれあいセンター』を避難所にしました。102名が入りました。このセンターは4階建てで図書館、福祉高齢者用の施設、会議室などがあります。この他に2カ所(駅から近い幼稚園と中学校)にも避難所を開設しました。最大人数は120人です。
そして、ご飯時の食べ物としてライスクッキー(尾西食品からの試供品)とアルファ化米を出しました。
ライスクッキーは好評でした。電車は18日夜9時まで止まっていましたので、翌19日まで避難所は開けておき、避難者は翌朝出て行きました。18日の昼食と夜食の2回分(240食)提供しました。
ふだんは高齢者が多いのですが、その時は通勤の人が多く、町内の人よりも町外の人の方が多かったです。途中下車したわけですから。駅には食べ物や飲み物の備蓄はなかったので、避難所と役場に置いてあった備蓄品を使いました。駅と役場が近くて助かりました。避難者は勤務地が遠いので歩けないと言っていました。タクシーもありませんでした」
この男性によれば、役場の職員3人ぐらいが避難所で案内や世話に当たったといいます。電気とガスは停止していなかったとのことですが、水道は濁っていて使えなかったそうです。
この町の備蓄は、たまごスープ(凍結乾燥の固形状に熱湯をかけるとスープになり、これは大変喜ばれる)など、少し変わったものも含まれています。本来は備蓄品として決められている重要物質の中から、選んで備蓄品を選択するのが通例のようで、そこには「たまごスープ」は入っていないとのことですが、何日も避難生活が続くと避難者は同じ種類の食べ物だけだと飽きてしまうということで、アルファ化米(4~5種類)や飲料水に加え、こうしたスープなども備蓄しているということです。気の利いた本気度の高い取り組みが帰宅困難者に勇気と安心を与えたと思われました。
「避難者が立ち去った後、部屋は食べ残しやゴミで汚れていましたか」と尋ねますと、「いやあ、皆、感謝してきれいに掃除をしてお帰りになりました」と。町の行政が、いかに行き届いた対応をしたかが分かります。
ちなみに、この島本町は人口3万1167人で、産業としてはサントリー山崎蒸留所があります。縁もゆかりもない見知らぬ人たち、それを救済することに力を惜しまず救援することが減災の原点だと肝に銘じました。お話を聞かせていただきありがとうございました
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