2016/05/24
誌面情報 vol55
支援物資供給上の課題
東日本大震災の翌日、仙台市の避難者数は10万5947人(人口の約10%)を数えた。一方、熊本地震では本震翌日(4月17日)の熊本市の避難者数は10万8266人(人口の約15%)であった。ただし、これらの避難者数は指定避難所に避難した人数であり、自治体による支援物資供給の基準は、こうした「指定避難所に避難した人のニーズ」であった。しかし、2つの地震の直後には自宅、公園、自家用車を含む指定避難所以外の多くの場所で膨大な数の人々が支援物資を求めていた。

小規模災害の場合に「指定避難所に避難した人のニーズ」を支援物資供給の基準とすることは、正しい。指定避難所に避難しない人は避難する必要が無い人であり、避難する必要が無い人には支援は必要ないからだ。しかし、東日本大震災や熊本地震では指定避難所以外の多くの場所から人々が支援物資を求めて指定避難所を訪れ、自治体の想定を超える支援物資ニーズが発生した。指定避難所は実態的には地域の支援物資供給所であったのだ。これを踏まえれば、大規模災害では「指定避難所および同周辺(指定避難所を含む行政区域)に所在する人のニーズ」が支援物資供給の基準となる。ただし、大規模災害であっても発生場所次第で支援物資所要は大きく異なる。自治体は、災害の規模と地域の特性に応じてどちらの基準を適応するかの判断基準を持っておく必要がある。
プッシュ型は東日本大震災以降に支援物資の供給要領の選択肢となった。このため自治体は、支援物資の供給要領をプル型にするかプッシュ型にするかを判断する必要が生じた。熊本地震の際に熊本市は、避難者数が10万人を超え、道路を含むライフラインや自治体庁舎が甚大な被害を受けている中でもプル型を選択した。この時点で熊本市は、ニーズ把握の遅延、職員の被災による人手不足、輸送の遅延などによってプル型が機能不全に陥ることを予期し、プッシュ型を選択することも可能であったと思われる。しかし、支援物資の供給要領をプル型にするかプッシュ型にするかは被災者と自治体に大きな影響を与える判断であり、自治体は明確な判断基準を持って決定する必要がある。この際、被害予測と災害が発生した季節・天候・時刻などを踏まえて必要となる支援物資の種類・量(ニーズ)を予測し、支援物資の備蓄量、輸送能力などを加味してプル型かプッシュ型かを決定するためのデータベースの整備やソフトウェア開発が必要となる。
誌面情報 vol55の他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/26
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方