その地域に根差した現場情報が重要

キャピタルの議論からは少しずれますが、創造的対応の鍵を握る要素として、「その地域に根差した現場情報」があります。KLLがさまざまなデジタルツールで収集をした情報は、その地域に住む人々が投稿する被害状況であったり、KLLのメンバーでもある医師が報告する被害者のニーズ情報といった、現場でなければ知り得ない情報でした。KLLのメンバーたちが被災地域の地理や状況に精通していたからこそ、このような情報を集めることに成功した、ともいえます。どんな災害であっても、日頃の慣れから生まれるドメインナレッジと同様、現場の状況に精通した人や情報は非常に重要となります。

話をキャピタルに戻しますと、KLLは社会関係資本の固まりのような組織です。災害対応だけに特化しているわけではありませんが、KLLに参画するそれぞれの団体がそれぞれの強みを生かしてデジタルツールを開発していくことに共通点があります。ただ、このネットワークには、政府組織や地元自治体と協働のチャンネルがありませんでした。いざ災害が起こると、災害支援のため、このチャネルの重要性が明らかとなりましたが、信頼構築には時間を要することになりました。

災害はいつどこで起こるか分かりませんが、キャピタルの復旧に必要な社会関係資本を日頃構築していくことが大切だと思います。その際には、連載第4回でも述べたように、内部の人間しかできないこと、外部の助けを必要とすること、を区別して考えておく必要があります。

このような社会関係資本は、ドメインナレッジと連結していることが望ましいといえます。単に社会関係資本を構築するだけではなく、その関係性の中にドメインナレッジを共有することが理想です。つまり、前回ご紹介した共通の組織資本作成のルールと同様に、社会関係資本の中にも共通のツール(KLLの事例で言うとQuakeMapのような、共通の地図上に誰でも投稿できるシステム)であったり、共通のドメインナレッジ(ネパールの例では、各支援組織間でドメインナレッジは共有されていませんでしたが、KLLに参画していたデジタルボランティアのITスキルは一定基準を満たしており、ツール開発に支障はありませんでした)を保有することができれば、いざ災害が起きたときに、迅速で、創造的な対応が可能となるのではないでしょうか。

* A. Dean and M. Kretschmer, “Can Ideas be Capital? Factors of Production in the Postindustrial Economy: A Review and Critique,” Academy of Management Review, vol. 32, no. 2, 2007, pp. 573-594. および M. Mandviwalla and R. Watson, “Generating Capital from Social Media,” MIS Quarterly Executive, vol. 13, no. 2, 2014, pp.97-113. を改変。

(了)