2014/09/20
C+Bousai vol1
広島土砂災害の教訓

広島県の過去の災害
昭和20年9月17日に鹿児島県枕崎市付近に上陸して日本を縦断した「枕崎台風」は、全国での死者・行方不明者が3756人という甚大な被害をもたらしました。その半数以上にあたる2012人が、洪水氾濫や土砂災害が頻発した広島県で犠牲になっています。広島では前日から台風に伴う雨が降り始め、17日の雨が降り止むまでの総降水量が218・7mmを記録したとされています。今回の豪雨は台風に
伴うものではありませんが、20日午前4時までの3時間に217・5mという枕崎台風の2日間の洪水量に並ぶ降雨量を記録していることから、いかに激しい雨だったかが分かります。
昭和42年7月8日には、台風7号の影響を受けて大雨が降り、呉市を中心に山崩れ、崖崩れ、土石流、河川の決壊、氾濫が発生し、死者159人を出す大災害が起きています。そして、近年では平成11年に、大雨に伴う土砂災害により、県内の南西部を中心に、死者および行方不明者32人、住家の被害が4516棟に及ぶなど、やはり甚大な被害が発生しています。
広島県は、花こう岩が風してできた、もろくて崩れやすい地質「真ま砂さ土ど」が多いことが既に指摘されていますが、広島市内の9割が真砂土に覆われているとのことです。県指定の土砂災害危険個所は全国最多の3万1987カ所あり、災害が起きた安佐北地区や、安佐南地区も含まれています。それにも関わらず、平地が少ないこともあり、土砂災害の発生しやすい山裾でも宅地開発が盛んに進められてきました。21日付け日経新聞は「市の人口は1960年代には50万人、80年代に入ると100万人を突破。急激な人口増加に伴い、山裾でも宅地開発が進んだ」と報じています。
一方、大きな被害が出た一部地域は土砂災害防止法の「警戒区域」に指定されていませんでした。同法は、平成11年の広島での災害を機につくられたもので、都道府県が土砂災害の危険のある区域を調査して指定し、市町村に宅地開発の規制や避難態勢の整備などを促すというものですが、あまりに危険個所数が多いことや地域の合意が得られにくかったことが理由のようです。しかし、はたして警戒区域として指定されていたら、今回の避難がうまくいったのかは疑問が残ります。
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