2019/08/20
危機発生時における広報の鉄則
相手の気持ちに寄り添う
「仕方ない」「大したことない」は日常的に使っている言葉だろうと思います。だからこそ要注意です。何が仕方ないのか、によるからです。
かつて「原爆投下はしょうがない」と発言した大臣が辞任に追い込まれまたことがあります(2007年6月30日の久間章生防衛大臣講演会)。被爆者団体からの猛烈な抗議が起こったのです。「しょうがない=仕方ない」は諦めの気持ちを表す言葉であり、犠牲者を深く傷つける言葉です。被爆者の気持ちに寄り添っていない軽率な言葉として相手に受け止められてしまうのです。
2011年3月11日の福島原発での事故発生時、住民への避難勧告において枝野官房長官が「直ちに影響はない」と発表しました。この言葉はネットやその後の事故調査委員会でも問題視されました。「大したことはない」と言っているようなもので、この言葉に住民の一部は安心さえしてしまったからです。大熊町の住民は、すぐに帰ることができると思って戸締まりや放射性物質による汚染予防対策もせず軽装で避難をしてしまったと証言しています。「しばらく帰れないかもしれない」という住民が不安に感じる情報を言葉にするのは勇気が必要ですが「言いにくいことを言う」ことが信頼につながるといえます。
もしもNGワードを言ってしまったら
では、NGワードについては対処する方法があるのでしょうか。あります。NGワードは、避けるのが一番ですが、つい言ってしまいがちな言葉でもあります。言ってしまった直後に、それだと気付ければ取り返しがつきます。そうすれば、言葉を続けながら、相手の目線に気持ちを切り替えていくことができます。
「法的には問題ないのです……。しかし、〇〇といったお叱りの言葉も寄せられ、皆さんの目からすると〇〇であったのでしょう。自分の〇〇な点が誤解を招いた(悪かった)のだと反省しています」
危機発生時には、相手(被害者)の気持ちに寄り添う、ここを基軸にすることが何よりも大切です。
(了)
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