2016/07/22
防災・危機管理ニュース
リオ五輪に立ちはだかる壁
五輪開催を直前に控えたリオ・デ・ジャネイロが非常に深刻な事態に陥っている。ブラジルの自然災害予防の中枢として整備された自然災害観測警戒センターリオ・デ・ジャネイロ州支部CEMADEN-RJ(Centro Estadual de Monitoramento e Alerta de Desastres Naturais-Rio de Janeiro)が先月、経済危機のために閉鎖されることになったのだ。さらに、ロイター通信によると、リオ・デ・ジャネイロ州は6月、財政が危機的状態にあるとして非常事態を宣言し、8月の五輪期間中に公共サービスを提供できるよう連邦政府に資金支援を要請した。これを受け、ブラジル政府は緊急予算として29億レアル(約890億円)を支出することを決定。この緊急予算措置無しにリオでの警察機構がオリンピック開催のためにうまく機能しないことは、ほぼ間違いないとされている。ブラジルは五輪開催に最大限の努力をしているが、取り巻く状況は困難極まりない。五輪開催においては、開催地の決定時時の社会経済状況と、開催時の状況が極端に異なる例が考えられるが、リオ五輪はその最たる例と言える。
2020年に東京五輪の開催を控えた日本が学ぶことは何か。
京都大学の山敷教授が2020五輪に緊急提言
水資源工学に詳しい京都大学大学院総合生存学館の山敷庸亮教授によると、ブラジルでは近年、極端豪雨による土砂崩れや洪水などの自然災害が多発しており、2011年1月には、リオ・デ・ジャネイロ州山岳部を中心に大規模な土砂災害が発生し、死者900人以上、行方不明者を加えると1000人以上の犠牲者を出したとされる大災害が発生している。
山敷教授によると、リオの山岳地帯は、2014年に大規模な土砂災害が起きた広島と似た「まさ土」(風化花崗岩)と呼ばれる地質が多く、洪水・土砂災害は、リオの最も大きな自然災害リスクだという。
ブラジル政府では、2011年の災害を受け、それまでの応急対応と復旧重視の防災政策から、災害予防を重点とした防災政策に転換。数千億円とみられる多額の投資のもと設置されたのがCEMADEN-RJだった。最先端の二重偏波レーダー雨量計ネットワークや地理情報システムを用いて自然災害を監視・モニタリングができる最新施設で、洪水、地滑り、極端豪雨、森林火災など、災害などの可能性が高まると、リオ・デ・ジャネイロ州の92市町村に警告を発行し被害を軽減することが期待されている。ハード面だけでなく、CEMADEN-RJには、気象学者や地盤、地理情報システムの専門家、消防士などが24時間体制で常勤し、事前監視から災害対応までを調整するコントロールセンターとしての機能も持つ。
CEMADEN-RJの閉鎖は、職員彼への給与が支払えなくなったことが理由とされる。現地の報道によれば、その額は、月額3万8750レアル。日本円に換算してわずか127万円。リオ在住の日本人によれば、CEMADENだけでなく、財政難で警官らの給料や医療機関従事者への未払いも続いており、五輪直前にストライキを起こしたりする可能性も指摘されているという。
絶対成功を義務付けられるオリンピックを実際に開催するための負担は計り知れない。本来、リオ五輪前までに世界最先端の防災システムを整備して、リオ・デ・ジャネイロを災害から守る構想は、経済破綻によりほぼ白紙となってしまった。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/25
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方