2019/09/09
安心、それが最大の敵だ
手と足をもいだ丸太にしてかへし

昭和12年は、いうまでもなく、日中戦争が始まったときである。提灯行列と旗行列、万歳の歓声のどよめきに送られて兵士は中国大陸へぞくぞくと送られていった。「アジア解放」の皇軍と聖戦の名の下に、荒々しい吐息ときらめく銃剣のときであった。
戦闘は泥沼化して厳しくなり、兵士たちは、白木の箱に包まれて帰ってきた(戦死したのである)。
しかし「英霊」となって帰国できる兵を、羨ましく思う兵もいたのである。両手両足を失い、カメの中に首だけ出して還った兵がいる。その兵にとって、カメは生涯の住み家だったという。
・高粱(こうりゃん)の実りへ戦車と靴の鋲
・屍(しかばね)のゐないニュース映画で勇ましい
同じときに発表した鶴の川柳である。日本軍はせきを切った洪水のように中国大陸の要衝をめがけて殺到した。蒋介石(国民党)と毛沢東(共産党)の中国軍は抗日戦線を張り、激しく抵抗した。日本の新聞は勝利に次ぐ勝利の報(中には虚報もあった)で紙面を埋めたが、それは点と線を占領したに過ぎず、戦争だどこまで続くぬかるみの様相を見せ始めるのである。詩人としての鶴のまなざしは、新聞報道の裏側の、語られざる事実に向けられ、これを凝視するのである。そして、官製の報道の裏にある戦争の真実を冷徹に歌うのである。なにも恐れるものがないかのように(言論弾圧は熾烈を極め、新聞は軍部の言いなりになった)。
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- 鶴彬
- 川柳
- 日中戦争
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/07/05
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方